山本 圭一Keiichi Yamamoto

テーマ
地域創生

東日本大震災の復興支援に業務として従事した経験から、地域の社会課題解決や街づくり、一次産業のスマート化をライフワークとしており、幅広く情報発信を行っています

山本 圭一

経歴

1995年、日本電信電話株式会社 九州支社に入社し、法人営業を担当。2002年にはNTTドコモ 第一法人営業部所属となり、約10年間大手都市ガス会社を担当。新サービスの開発、各種プロジェクトリーダーなども経験した。2011年12月、東日本大震災を機にNTTドコモの社長直轄組織となる東北復興新生支援室が設置され、担当課長に就任。「東北復興★みちのくマルシェ」の全国展開、高齢者向けのタブレット講習会、NPO支援などを実施。三陸の養殖漁師の要望に応え、海洋観測サービスICTブイの開発・実証を行う。2017年からはICTブイのサービス主幹として水産業のスマート化に主軸を置き、第一法人営業部地域協創・ICT推進室の担当課長に、2022年にはNTTコミュニケーションズ ソリューション&マーケティング本部 事業推進部(現ソリューションコンサルティング部)地域協創推進部門の担当部長に就任。2024年には株式会社NTTアクア代表取締役社長となった。

仕事をする上で常に大事にしてきたことは「聴くこと」「感謝すること」「利他(誰かのため)に行動すること」。自然に触れる、体を動かすことが好きで、趣味は釣り、農作業、温泉など。広島県出身。

活動履歴

主な所属団体
  • 水産庁 明日を拓くスマート水産業研究会 漁業・養殖WT 有識者(2019)
  • 水産庁 スマート水産業現場実装委員(2020~)
  • 神戸市 神戸市海洋産業振興プロジェクト推進委員会 委員(2021)
  • 東京都 東京の水産業振興に向けた専門懇談会 専門家(2022)
  • デジタル庁 デジタル推進委員(2022~)
  • 未来まちづくりフォーラム実行委員(2019~)
主な講演活動
主な執筆活動・論文など
  • NTT技術ジャーナル 2021年6月号
  • 養殖ビジネス(緑書房)
  • スマート養殖技術(エス・ティー・エス)
  • 生物工学会誌 第96巻第7号
  • アグリバイオ April 2018
Web掲載

講演動画

水産業起点の地域創生

インタビュー

  • 01

    エバンジェストとしての得意分野とミッション

    入社から15年近く法人営業一筋で各種プロジェクトを担当した後、2011年の東日本大震災を機に、社長直轄組織の東北復興新生支援室の担当課長として、東北の社会課題解決と地域創生に取り組むことになりました。心掛けたことは、寄付に頼るのではなく地域の方が主体となって継続できるビジネスの種をまくこと。当時はまだSDGsという言葉がなく、マイケル・ポーター教授の「CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)」という提言に感銘を受け、企業が社会課題に取り組むことで経済的価値も創造されることを、支援室の活動の指針に盛り込みました。

    支援を続ける中で、常に地域の方々に寄り添いながら「聴くこと」でその立場や価値観を理解し、漁業や農業の切実な声を受け止めることができ、必要な支援やビジネスの形が見えてきました。例えば、無農薬の農家さんと一緒に、どうしたら草が生えないか、生えたらどうするか、といったデータ取りや分析を基に「農業肥料不使用ササニシキ栽培プロジェクト」を実施しました。

    どの事業も一過性のブームではなく、地域の方々が喜んでくださり、しっかりと根付いていくビジネスに道筋を付けるのが地域創生におけるドコモビジネスの役目。一つのロールモデルをお客さまと共につくりあげて実装できれば、新たなお客さまに対しても再現性のあるご提案ができます。見たこと、聞いたことではない、自分が手を動かし経験したことを広げていけば、「それなら、うちもやってみようか」と前向きに考えてくださるお客さまも増えます。私たちと組んでいただいたことで、飛躍的に効率が良くなった、事業が拡大したという成功事例を、エバンジェリストとして今後も増やしていけたらうれしいです。

  • 02

    これまでの活動を代表するプロジェクト

    地域の方々のお悩みやご要望を聴く中で、養殖漁師さんの「海の見える化ができないか?」との声に応えて一緒に作ったのが、通信機能とセンサーを搭載したICTブイでした。今まで海に出て測定していた水温などのデータが手元のスマートフォンで手軽に見られるため、現場からは「従来の養殖漁業にはもう戻れない」という声も頂き、現在全国で約100台以上が稼動しています。ICTブイ導入で養殖漁業のやり方が変わったことは、まさにDXが起きたと言えます。また、当初は機械自体が大きく送料が高額になってしまったため、要素を絞って小型化して送料を大幅に抑えるなど、現在もなお、使う人の視点に立って改善を重ね、養殖漁場を支えています。

    ICTブイから派生したニーズにも幅広く応えています。車エビ養殖では、夏になると朝方に溶存酸素量が低下し、酸欠死が発生することが問題となっていました。それを解決するために、ICTブイと連携した高濃度酸素溶解装置を設置し、車エビ養殖の安定生産を実現しています。ある養殖組合では、装置導入により売り上げが2倍、利益が4倍アップし、大変喜んでいただいています。

    2017年より東北復興支援で行ってきたスマート水産の事業は全国へと広がり、2024年には地域創生の拡大をめざして株式会社NTTアクアが誕生。全国展開が可能な陸上養殖に軸足を置き、ドコモビジネスのICT技術を活用したプロジェクト展開を進めています。

  • 03

    ドコモビジネスと共に描く未来

    陸上養殖によって、地域創生と食料安全保障の両方の社会問題を解決できる。そんな世界をつくるお手伝いをするのが、私のめざす道です。

    東北や全国の漁業現場を回っていく中で、水産業はポテンシャルが高く、地域創生につながっている事例も幾つか見てきました。しかし、日本の漁獲量は減少し、漁業の担い手不足も深刻です。海面養殖でも天候の影響を受けますし、漁業権の問題で新規参入が困難です。陸上養殖であれば、漁業権は不要で、環境負荷が低く、安定生産が可能となります。今後はドコモビジネスが培ってきた知見や技術力を生かし、各地で求められる魚の種類、ニーズなどを把握してブランディングし、結果の出せる陸上養殖を展開していきたいと考えています。

    また、日本のエネルギーベースの食料自給率は、先進国の中でもっとも低い状態。食用魚介類では60%を切っており、他は海外からの輸入に頼っています。このような状況で有事が起きた場合、当然ながら食料供給はストップしてしまいます。ですが、日本全国に陸上養殖が広まり地産地消で魚が獲れる仕組みが根付いていれば、食料問題の解決にも役立ちます。

    これまで各地の漁師、農家の皆さんと本音で語り合い、さまざまなICT技術を活用した製品やサービスをカタチにしてきました。関わる中で築いてきた地域の方々とは、今でも温かい交流が続いています。食を支える全ての方々をドコモビジネスの大切なパートナーとして、プレーヤーとして巻き込んでいきながら、地域から日本を元気にする取り組みを広げてまいります。

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職などは取材時点のものを掲載しております。