紙ストローは本当に必要か?
飲食業界では、プラスチックストローを紙ストローに変える動きが活発化しています。
たとえば某大手コーヒーチェーンでは、2021年9月より店頭で提供するすべてのストローを紙製とし、年間約2億本分のプラスチックストローを削減するという取組みを実施。加えて、某大手ハンバーガーチェーンでも、2022年10月から全国の店舗でプラスチックストローを紙ストローに変更しており、カトラリー(食器)についても順次木製に変えていく意向を発表しています。
しかし、紙ストローの使用には不評の声もあがっています。たとえば、紙ストローでドリンクを飲むと、ストローが水分を吸い柔らかくなることで、飲みづらく、唇にくっついて気持ちが悪いという声もあります。さらにいえば、紙ストローの味がすることで、ドリンクが不味く感じる、といった意見もあります。
はたして、プラスチックストローを紙ストローに変える必要は、本当にあるのでしょうか?
プラスチックを自由に使って良い時代は終わりを迎えている
このようにプラスチックストローを紙ストローに転換している背景には、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した企業の動きがあります。プラスチックの削減は、SDGsの17の目標のうち「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」の4つに当てはまっています。
プラスチックのごみは、地球環境に悪影響を与える恐れがあります。たとえば海に流れ出たプラスチックゴミは、微細なマイクロプラスチックとなって、地球上の海を漂い続けます。すでに世界各地で、クジラの死骸から大量のビニール袋が発見されたという事例や、ウミガメやイルカ、アザラシなどの体内からマイクロプラスチックが発見されており、このままマイクロプラスチックが増え続けることで、さらなる悪影響が生まれかねません。
地球環境への悪影響を考慮し、2020年7月には、経済産業省の呼びかけでプラスチック製レジ袋の有料化がはじまりました。これは、普段何気なく店頭で受け取っているレジ袋を有料化することで、“それが本当に必要か?”と、ライフスタイルを見直すきっかけになることを目的としてスタートしたものとなります。
さらに2022年には、「プラスチック資源循環促進法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)」という法律もスタートしています。同法では企業に対し、ストローやフォークなどのカトラリー類をプラスチック以外の素材に変える旨の指針が規定されています。
したがって、プラスチック製品を自由に使い続ける時代は、すでに終わりを迎えているということがいえるでしょう。
ストローやレジ袋以上に変化が必要である
脱プラスチックを進めていくことは、何も人間に不都合なことばかりではありません。結果的には、人類の健康を守ることにもつながります。
先述した通り、プラスチックゴミが海に流出することで、海洋汚染のみならず、最終的に人間にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。たとえば、マイクロプラスチックが入った魚が捕獲されて市場に並べば、それが私たちの口に入ることになります。
現時点で人体への確かな健康被害は明らかになっていませんが、海に浮かぶプラスチックゴミが海洋生物に悪影響を与えているように、この状況が長く続けば、将来的に人体にも何かしらの悪影響を及ぼす可能性は高いと考えられます。しかし、これからプラスチックを減らしていくことで、マイクロプラスチックが増えていくことが抑制できます。
もちろん、ストローをプラスチックから紙に変えたり、レジ袋を受け取らない程度では、状況は変わりません。そもそも人類はそれ以外の多くの部分でプラスチックに依存した生活を送っています。急速にプラスチックを減らす生活に変えるのは容易ではないでしょう。とはいえ、何も行動をしないのであれば、マイクロプラスチックはどんどん増えていくことになります。
我々人類には、ストローがプラスチックから紙に変わる以上の変化が求められています。これからも多くのプラスチックが別の素材に変わっていくことが予想されますが、変われば変わるほど、人類をはじめとする地球上の生き物の暮らしも改善していくことでしょう。