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【空き家活用】
ウェブを通じて空き家を「みんなで」再生へ

【空き家活用】ウェブを通じて空き家を「みんなで」再生へ

Yoshimura Maru
編集オフィスPLUGGED
現在増え続けている全国の空き家は社会問題化しています。2018年に行われた「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によると、総住宅数約6241万戸のうち、空き家数は848万9千戸で、2013年の調査と比較すると3.6%増加(29万3千戸増加)、空き家率は13.6%増加で0.1ポイント増加しています。アキサポは、空き家を所有者から借り上げてリノベーションし、利用者へ貸し出すという仕組みを作り、首都圏や地方の空き家問題を解決しています。首都圏、地方、それぞれが抱える空き家問題の違いや解決法、新たなビジネスの創生のアイデアと空き家問題とを組み合わせた試みなどについてリポートします。 (第3回/全3回)

目次

■第1回からご覧になりたい方はこちら
【空き家活用】地域経済を活性化するリノベーション術

地方創生と地方経済活性化の鍵は
空き家の活用にある

全国的に社会問題となっている「空き家問題」ですが、その根底には地域の過疎化が存在しています。この問題を解決すべく、国は、2014年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を制定、2015年に施行しています。2023年には一部が改正され、倒壊の危険が高い「特定空き家」になる前の段階で、自治体による早期介入が可能になりました。

アキサポを運営するジェクトワン所属の熊谷浩太さんは、総務省の制度で新潟県三条市に地域活性化起業人として派遣され、現在同市の市民部環境課に籍を置きながら、空き家対策・空き家活用などを通じて地方創生に取り組んでいます。

熊谷浩太さん。三条市特命空き家仕事人。1級建築士。宅地建物取引士。JR東日本で大規模開発、不動産デベロッパーなどを経て2020年ジェクトワンに入社。2022年5月から、三条市特命空き家仕事人に就任。
熊谷浩太さん。三条市特命空き家仕事人。1級建築士。宅地建物取引士。
JR東日本で大規模開発、不動産デベロッパーなどを経て2020年ジェクトワンに入社。
2022年5月から、三条市特命空き家仕事人に就任。

熊谷「行政もこの課題に取り組むべく、自治体ごとの課題に合わせた対策を行っていますがマンパワーが足りず、対策が追いつかない実情もあります」

そんななか、総務省では2021年に地域活性化起業人(企業人材派遣制度)を創設。地方公共団体が民間企業の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を生かしてもらい、地域の魅力や価値の向上などにつなげていくというものです。

熊谷さんは、この地域活性化起業人の制度によって三条市に派遣され「特命空き家仕事人」に任命されました。3年間の期限で、同地の空き家問題に取り組んでいます。

熊谷「現在2年目なのですが、空き家のサポートは町の課題に直結しています。私が配属された当初は、空き家は多くあるはずなのに問い合わせはほぼなかったのです。まずは、周知してもらうことからはじめました」

地方の空き家活用は仕組みを知ってもらうことから

着任当時、空き家の相談件数は年間30件程度だったといいます。

そこで、熊谷さんは、まず多くの地域住民の「目に触れる」よう、空き家相談ボックスを町の12カ所に設置し、新聞各紙に働きかけました。

さらに「待っていても仕方がない」と町の行事や祭りには必ず出席し、さまざまな地域団体に顔を出すなど精力的に動きました。また、チラシやポスター、ホームページバナーを作り行政の窓口に設置したり、市長と一緒にラジオに出演したりしながら、空き家の活用法について伝え続けたそうです。

地方の空き家活用は仕組みを知ってもらうことから

熊谷「少しずつ顔を知ってもらい、『熊谷という人間が役所で空き家対策をやっているらしい』『空き家のことならとりあえず熊谷に相談してみるか』『役所でやっている事業なら安心だから』と安心感を持って認知してもらえるようになりました。各地のイベントで、『空き家活用がテストマーケティングに非常に有効である』などのプレゼンをすることで、契約につながるようにもなりました」

三条市の空き家の相談件数は飛躍的に伸び、2022年度は303件、2023年度は540件(2024年2月末時点)になっています。

空き家活用が地方創生の突破口になる

2022年には、地方創生のために空き家を活用する「一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクト」を立ち上げ、地域住民の信頼をさらに得ていった熊谷さん。

熊谷「実際の空き家運用となると、官の立場だけだとなかなか動けないことも出てきます。そこで、社団法人を立ち上げたことで本当の意味での官民連携ができるようになりました。地域の皆様への安心感もさらに増していると思います」

2023年の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の改正によって、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人や社団法人を「空き家等管理活用支援法人」に指定することができるようになりました。

現在、燕三条空き家活用プロジェクトでは地域の企業とも連携し、専門家とコラボするなどしてさまざまな企画を進めています。

地域の企業やベンチャーとのコラボも実現。
三条市の若手農家「たけちょう商店」、湯沢町の観光、宿運営を手掛ける「SNOW SAFARI」と、熊谷さんの燕三条空き家活用プロジェクトで「CRAFT VILLEGE INC.」という団体を構成し、農家民宿「Sanju〜燕三条古民家の宿〜」を開業しました。

農家民宿「Sanju〜燕三条古民家の宿〜」
農家民宿「Sanju〜燕三条古民家の宿〜」

古民家を改装した民宿は、1日1組の1棟貸しというスタイルで、農作物を収穫して調理するツアーなどのプランを展開しています。

ウェブ活用でコミュニケーションも拡大

現在、熊谷さんはジェクトワンの立場としても地方創生にまつわる活発な動きを生み出しています。

ブロックチェーン技術を活用した観光DX・地域創生事業を行うSOUQ株式会社とジェクトワンが協力し、DAOという分散型自律組織の形態を活用しながら、空き家問題に取り組んでいます。

熊谷「アキサポの空き家情報や、SOUQが観光DXに携わるなかで利活用の相談を受けている廃旅館や施設などから、プロジェクト化できそうなものを厳選して発信しています」

「空き家DAO」の画面
「空き家DAO」の画面

所有者や利用者は、空き家のウェブサイトを通じて物件を知り、気に入った物件があればサイト上でその物件のコミュニティに参加することができます。コミュニティでは、利用者が考える理想的な活用方法を所有者に直接提案したりすることができます。

熊谷「利用者1人では利活用が難しい古民家や大きな物件も、みんなで所有して、みんなで活用していけば、可能性が広がります。空き家を一つのきっかけにして、移住者が増えるかもしれない、仕事が生まれるかもしれない。そう考えると、空き家はネガティブなものではなく地域活性の財産になります」

2023年には空き家を利用した地域の複合交流拠点「三-Me.(ミー)」でグッドデザイン賞を受賞(一番左が熊谷さん)
2023年には空き家を利用した地域の複合交流拠点「三-Me.(ミー)」で
グッドデザイン賞を受賞(一番左が熊谷さん)

「特命空き家仕事人」の熊谷さんに、空き家問題に取り組もうとしている自治体や地元の企業に対するアドバイスがあるか聞いてみると、次のような答えが返ってきました。

熊谷「現在、全国の自治体から視察に来ていただいているのですが、大切なのはやはりどうやって知ってもらうか、そして、いかにスモールスタートをするか。スピード感を持ってとにかくすぐに動いてみる。トライアンドエラーを続けるかということが重要だと思います」

(完)

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。
取材、執筆:MARU
バナーデザイン: 山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:岩辺みどり
写真提供:ジェクトワン
バナー写真:dolgachov / gettyimages

空き家活用(全3回)

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