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高圧上司から標的に…
「ナメられ社員」にならないための対処法

高圧上司から標的に…「ナメられ社員」にならないための対処法

時間管理の問題に、ときどき人間関係の問題が混在することがあります。いわゆる「ナメられやすい」人は、厳しい口調の人が苦手で、避けがちで、そのせいでタスクが滞ることが多くあります。今回は、この「ナメられやすい」問題に切り込みます。

目次

■前回の記事からご覧になりたい方はこちら
“上司が苦手”の原因は…あなたの「情報処理」タイプはどっち?

写真:Pattanaphong Khuankaew / gettyimages
(写真:Pattanaphong Khuankaew / gettyimages)

ナメられやすく気弱なユウスケさん

会社員のユウスケさん(仮名、30代男性)には、以前から苦手な上司がいます。高圧的で口調が厳しく、できればプライベートでは話したくないような怖いタイプです。

その上司は、ユウスケさんに対してだけ厳しいわけではなく、社内でも有名な、説教が怖くて長い人です。しかし、みんながみんな、その上司の言葉を正面から受け止めてストレスに感じているわけではないようです。

長い説教を淡々と聞いてスルリとかわしている人、なぜか懐に入ることができてかわいがられている人などさまざまです。

そんななか、ユウスケさんは不器用にもいつもその上司の逆鱗に触れてしまい、ものすごく叱られて、落ち込むタイプです。

あなたのまわりにもこんなふうに「なぜか怖い人に捕まってばかりの人」、いませんか?
いわゆる“ナメられやすい気弱なタイプ”です。もしかすると、あなたご自身がそうかもしれません。

写真:kuppa_rock / gettyimages
(写真:kuppa_rock / gettyimages)

ナメられることは、一概に悪いことばかりではありません。人に変なプレッシャーを与えないので、優しい指導ができるでしょう。第一印象が優しいので、人の心を開くのに向いています。

しかし一方で、ユウスケさんは、ほかの人の何倍も叱られ、萎縮し、ストレスを抱えています。そろそろ後輩の指導も任される時期ですが、後輩の顔色をうかがってしまって、後輩と上司の板挟みになる未来が見えています。

ユウスケ「オレがこの会社で楽しく働いている姿が想像できない……こんな毎日、65歳まで続けられる自信がないよ。ゾッとする」

ユウスケさんは、なぜ「ナメられる」人になってしまったのでしょうか?

「すみません!」と全力で謝って降伏する

ユウスケさんの両親は、とても優しい人たちでした。理解があって、共感的で、家庭も平和な雰囲気でした。

ユウスケさんに初めての試練が訪れたのは、小学生のときでした。スポーツ教室の先生が、非常に厳しくて怖い人だったのです。

ユウスケさんにとって、そんなキャラクターは家族の誰にも似ていません。あまりに怖い雰囲気に、ユウスケさんはどうしたらいいか、まったくわかりませんでした。

ユウスケ「世の中には、まったく理解不能な怖い人がいるんだな」

ユウスケさんの家族や親戚など身近なところに、ひとりぐらい怖くて不機嫌になりやすいけれど、なんだかんだで優しい誰かがいたり、そんな人をなだめながらもうまいことやれる人がいたりすれば、いいモデルになったのでしょう。

しかしユウスケさんにとって、そのスポーツ教室の怖い先生は「得体の知れない宇宙人」ぐらい対処に困る存在だったのです。なにが引き金になって怒り出すかわからなかったし、怒り出したときに、どう対処すれば自分を守れるかわからなかったのです。

写真:recep-bg / gettyimages
(写真:recep-bg / gettyimages)

その後のユウスケさんは、中学校の部活の先輩、大学時代の指導教官、バイト先の店長などいろいろな怖い人に遭遇し、そのたびに萎縮していました。その過程で学習したのは、「すみません!」と全力で謝って降伏することが怒りを助長させないということでした。

そんなユウスケさんはいま、その怖い上司にすぐに謝ってしまいます。ほかの人から見れば、「それはユウスケさんの責任じゃないよ」ということでも、なにも言い訳せずにすぐに謝ります。ユウスケさんは、この態度こそがさらなる攻撃をかわせると信じていました。

しかし、実はこれは「自己達成予言」と呼ばれる悪循環を生んでいたのです。

「自己達成予言」とは?

ユウスケさんは「相手が怒っている=自分になにか落ち度があるに違いない」と信じて疑いません。小学生の頃からの学習です。そう信じて全力で謝ることでしか、身を守れなかったのです。

当時は、この対処法がうまく働いていました。ヘタに口答えしたら、その先生は余計に感情的になって、長い説教をしていたかもしれません。

しかし、いまは皮肉にも、このユウスケさんのビクビクと背中を丸めて、オドオドしながら謝る姿は、いかにも弱々しく見えるだけでなく、“なにも考えずにとりあえず謝っている”出来の悪い社員に見える原因になっているのです。

写真:maroke / gettyimages
(写真:maroke / gettyimages)

このように自分が信じていることに基づいて行動した結果、実際にそれが現実のものになってしまうことを「自己達成予言」といいます。

ユウスケさんの場合、「自分になにか落ち度がある」と思っているからこそ、申し訳なさそうな態度に出て、上司が怒っているもととなった仕事のミスの原因を正しく分析せず、すべての原因を自分に帰属してしまっています。

一方の上司からすれば、オドオドしながら謝り、弱々しくしているユウスケさんの態度が、さらに攻撃性を引き出させる原因になっています。結果的に、ユウスケさんの“予言”は当たってしまっているのです。

「自己達成予言」を理解するために、違う場面の例を挙げてみましょう。

相手から自分が愛されているかどうか自信がないときに、「私のこと本当に好き? 本当に?」と何度も確認したとします。

これに対して、相手も最初のうちこそ頑張って「好きだよ」と答えていたのが、何度も重なると疲れてきて「わかったよ。もう、好きだって」などと、ちょっとめんどくさそうに返事をするように……。

そうすると、すかさずその表情をとらえて「ほら! やっぱりね。私のこと好きじゃないんだ」と自分の思い込みに近い現実にスポットを当てて、これまでのやりとりを台無しにしてしまうのです。

写真:xijian / gettyimages
(写真:xijian / gettyimages)

「自己達成予言」は、私たちがもともと持っている思い込みに一致する現実のみに飛びつきやすいことで引き起こされます。

こうしてユウスケさんは、怒られたくないと思いながらも、自ら無能社員のような行動をとり続けて、ますます注意されて萎縮していくのです。

それでは、この「自己達成予言」の悪循環からどのように脱出すればいいのでしょうか。

ナメられてしまう人の対処法

「自己達成予言」の悪循環から抜け出すには、自分がその“予言”にだまされないことです。

具体的には「自分になにか落ち度がある」などの予言に沿った行動をする代わりに、その思い込みをまず疑い、「過去はさておき、今回の出来事は実際のところ、どうなんだ?」と現実を捉え直すとうまくいきます。

そして、悪循環から抜け出すときには、「多すぎる行動」を減らして、「少なすぎる行動」を増やすことが近道です。

もう少し具体的にいえば、ナメられてしまう人は「自分がダメだ」「自分は弱い」「自分は愛されない」といったネガティブな思い込みをしがちですので、まずは、その性分に日頃から気づいておくこと。

そして、「ああ! やっぱり自分はダメなんだ」「弱い自分は負けてしまう!」「嫌われてしまった、もう終わりだ」と信じて疑わない状況が起きたときに、「あれ? もしかして、いつもの思い込みのせいで、事実以上に自分は破局的に解釈してないか?」と疑ってみるといいのです。

写真:metamorworks / gettyimages
(写真:metamorworks / gettyimages)

ユウスケさんの場合には、まず「自分になにか落ち度がある」という予言に対して、「待てよ?」と立ち止まることです。

そして、「なんでもかんでも自分の責任にしすぎること」「謝りすぎていること」が多すぎる行動で、その反対に「仕事のミスの分析」をしておらず、「自己主張」をあまりにもしていないことに気づく必要があります。

ユウスケさんに訪れた“気づき”

ユウスケさんに、今回の仕事のミスは本当のところ、なにが原因だと思うか冷静に考えてもらいました。

ユウスケ「本当のところ、上司の指示が曖昧でわかりにくくて。それをちゃんと確かめなかった自分にも落ち度があるんですよね」

よくよく尋ねてみると、今回の仕事のミスは、上司がはっきりと締め切りを伝えずに「なるべく急いで」と指示していたこと、ユウスケさんもその上司が苦手なので期限を確かめずに自分なりには急いでいたこと、それでもさすがにこの仕事量だと2、3日の猶予があると思っていたら、急に上司が指示したその日のうちに「まだできていないのか」と怒り出したという状況でした。

双方に落ち度があり、ユウスケさんだけが謝り倒すのはちょっとバランスに欠けています。かといって、「あなたが期限をちゃんと指示してくれないから、こんなことになったんです」と上司に言うのも緊張が走ります。

写真:35mmf2 / gettyimages
(写真:35mmf2 / gettyimages)

まわりの社員の行動がヒントになりますね。見渡してみると、こういうとき、以下のような対応のバリエーションがあることに気づきました。

「そ、そんなに急ぎだったのですか! すみません!」(と、ちょっと大げさに驚いてみることで、上司が期限を言ってなかったことを知らせる)

「申し訳ありませんが、期限についてご指示をいただいておりませんでした。こちらで確認すべきでした」(低姿勢に見えつつ、冷静に指摘している)

そして、まわりの人たちを観察していてもうひとつ気づいたのは、みんな、ユウスケさんほど背中を丸めてビクビクしたり、何度もペコペコしたりせずに案外、ふつうの態度だったことです。

ユウスケ「もしかして、みんな言うほどすまないと思っていないのか?」

これは、ユウスケさんにとって大きな発見だったようです。

いかがでしたか? 

まずは自分が日頃からしている思い込みに気づいておくことが「自己達成予言」から抜け出す第一歩ですね。

中島美鈴(なかしま・みすず)
公認心理師・臨床心理士。博士(心理学)。九州大学大学院人間環境学研究院学術協力研究員。X発信中。このコラムの更新や筆者のADHDや心理学系のお役立ち情報が受け取れます。

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。

文:中島美鈴
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:鈴木毅(POWER NEWS)

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