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「睡眠」からのアプローチが必要
スリープテックが企業と社員にもたらす
メリット

健康経営には「睡眠」からのアプローチが必要 スリープテックが企業と社員にもたらすメリット

睡眠不足による日本の経済損失は2025年に18兆円規模に達する予測をご存じでしょうか。いま企業が率先して取り組みたい健康経営、睡眠不足解消のアプローチ、「スリープテック」について解説します。

目次

日本は睡眠不足大国? 経済的損失のリスクも

皆さまは充分な睡眠時間がとれていますか。CPAP装置をはじめとした医療機器を製造・販売するレスメドが実施した「世界睡眠調査 2024」によると、日本人の平均睡眠時間は6時間27分(6.45時間)となっており、米国国立衛生研究所が推奨する7時間から9時間の睡眠を下回っています。

1日の平均睡眠時間 トップ3とワースト3

1日の平均睡眠時間 トップ3とワースト3
※出典:「世界睡眠調査2024」(レスメド)を加工して作成

同調査で睡眠の質に「満足していない」と回答した日本人の割合は40%で世界ワースト1位になっており、睡眠時間のみならず、睡眠の質についても日本人は世界的にランクの低い状況にあるようです。

睡眠への満足度

睡眠への満足度
※出典:「世界睡眠調査2024」(レスメド)を加工して作成

この日本の睡眠不足による経済損失は、2016年のアメリカのランド研究所のレポートでGDP比2.9パーセントに相当と報告されています。これは当時のレートで年間15兆円となります。さらに第一生命経済研究所が予測した実質GDPの成長率などをもとに算出すると、日本の経済損失は2025年に18兆円規模になるといいます。つまり、仕事に対するパフォーマンスの維持・向上には睡眠の質が深く関わっており、睡眠不足が個人の生産性を低下させ、企業や社会全体に大きな経済損失を与えることを防ぐために、早急な対策が求められています。

実は科学的なアプローチで睡眠の質を向上できる方法があることをご存じでしょうか。いま話題のスリープテックとは、「Sleep(睡眠)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた言葉です。ITやAIなどの技術を活用し、人の眠りを科学的に分析、睡眠不足を改善、睡眠の質を高める製品・サービスのことを指します。 主なカテゴリーとして睡眠改善・支援サービス、寝具、スマホアプリ、ウェアラブル機器、睡眠支援ガジェットなどがあり、すでに多くの企業が事業参入しています。国内のスリープテック市場規模は2026年には175億円に到達するという予測もあります。

国内スリープテック市場規模推移・予測

国内スリープテック市場規模推移・予測

注1 事業者売上高ベース
注2 2023年以降は予測値
注3 スリープテック関連の寝具・家電等の製品・サービス・システム利用料・アプリ使用料を対象として市場規模を算出した

※出典:「スリープテック市場に関する調査(2023年)」(矢野経済研究所、2024年2月26日発表)

NTT東日本が発足させた睡眠コミュニティー
「ZAKONE」とは

各企業がスリープテック事業の取り組みを推進する中で、ひときわ脚光を浴びているのがNTT東日本です。NTT東日本では「先端技術で睡眠の質を高めるスリープテック」でイノベーションを起こすために、2022年9月にNTT DXパートナーとともに異業種連携のSleep Network Hub「ZAKONE(ザコネ)」を立ち上げています。ZAKONEは企業や個人をつなぐことで日本の睡眠業界を盛り上げていくことを目的とした睡眠コミュニティーです。発足から2年足らずでZAKONEは160社超が加盟する一大コミュニティーに成長しました。2025年春には200社を超える見通しだといいます。

ZAKONEの参加メンバーの顔ぶれは多岐にわたり、睡眠計測機器や寝具を手がけるブレインスリープやエステー、第一生命保険、JTB、長谷工グループ、日本出版販売、テレビ東京といった企業のほか、銭湯、寺院、保育園なども名を連ねています。ZAKONEの主な取り組みとしては、睡眠に携わる企業同士がつながる機会を提供する「Community」、共創プロジェクトを生み出すイベントやプログラムを開催する「Collaboration」、睡眠に関するプロダクトの先行体験機会の提供 / 啓蒙活動を行う「Information」の3本柱になっています。加えてミートアップイベント「ZAKONE NIGHT」を月1回開催しており、睡眠に関する実証実験に結び付いた例も少なくありません。代表的なものとしてエステーとの「トドマツの香り成分の効果検証」、日本出版販売との「読書と睡眠の効果検証」などがあります。さらにZAKONEを通じた企業のコラボレーションも促進されており、大企業から中小企業、非営利団体など、企業規模にとらわれない取り組みが誘発されているといいます。一例として新幹線車内での仮眠実証、寺院や老舗旅館でのイベントなどが開催されています。

2024年8月よりZAKONEでは企業・自治体向け「健康経営推進サポート」を開始しています。その発端は、睡眠への関心が高まりつつある日本において、経営における生産性の向上やプレゼンティーズムの解消に目を向ける企業や自治体が増える一方、社員や職員に対する睡眠改善の取り組みを実行しているケースはまだ少なく、ZAKONEにも「どのように取り組めばいいかわからない」という声が寄せられたためです。このような課題の解決に向け、ZAKONEでは企業や自治体が睡眠改善に関する取り組みの第一歩を踏み出すための「健康経営推進サポート」を開始。2024年度中に50社・自治体への提供をめざしています。

※プレゼンティーズム(presenteeism)とは、WHO(世界保健機関)が提唱する、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標です。出勤しているものの健康問題が理由で生産性が低下している状態、心身の不調でパフォーマンスが思うように出せない状況のことです。

これまでのZAKONEはサービス提供企業主体のコミュニティーでしたが、今回の取り組みにより、「サービス提供企業、健康経営や地域の睡眠改善をめざす企業・自治体、睡眠課題に悩む個人が集い、みんなで日本の睡眠改善をめざす」コミュニティーへと進化を遂げ、日本における新たなスリープテック経済圏の確立に挑戦していくそうです。

スリープテックは企業の健康経営にも有効

昨今、経済産業省が主体となって「健康経営」を推進するなど、経営的視点から社員や職員の健康保持、増進に着目する企業や自治体が増えています。健康経営とは社員や職員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。経済産業省が2016年より実施する「健康経営優良法人認定制度」の認定企業数も年々増加傾向にあり、とくに2021年度以降に「睡眠」に関する回答項目が追加されたことが追い風となり、睡眠に関する健康増進への取り組み件数も増加傾向にあります。経済産業省の「企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」によると、「睡眠休養」の項目において、リスクあり・リスクなしの人のプレゼンティーズム損失コストの差額は年間約33万円、これは「運動習慣」(約3万円)、「アルコール摂取」(約26万円)の項目と比べても高額となっています。つまり、企業が健康経営でスリープテックを導入するメリットは、社員が(比較的)参加しやすい施策で睡眠休養の質を高めることで、生産性や業績を向上できることにあります。

早稲田大学が発表した「睡眠改善アプリを用いた健康経営施策が生産性に与えた影響:RCTに基づく検証(独立行政法人経済産業研究所)」でも、健康経営に睡眠施策を導入することで、時間管理・集中力・仕事の成果が向上したと報告されています。この研究では睡眠計測デバイスにより睡眠客観データと主観アンケートもとに1人ひとりの睡眠傾向や睡眠課題を可視化、睡眠課題を改善する睡眠改善プログラムを活用。製造業企業に勤務する約200名の社員をランダムに、睡眠改善プログラムに参加する社員と参加しない社員のグループに分け、3ヵ月間の睡眠改善のRCT(ランダム化比較試験)を実施しました。実施前は2つのグループに睡眠時間、睡眠の質に大きな違いは見られませんでしたが、実施後はプログラムに参加した社員に集中力や仕事の成果といった睡眠改善の効果が見られ、さらにプレゼンティーズムの改善も確認されました。睡眠が改善することで生産性が上昇することが統計的に明らかになり、睡眠改善プログラムの経済的効果は1人あたり年間12万円と評価されています。

これらの検証結果は、仕事や私生活のさまざまな変化やイベントで睡眠の悪とは誰しもに起こりうるものの、睡眠改善アプリなどのIT利活用による睡眠改善を促すことで、実際に睡眠の未充足は改善され、生産性の回復が見込めることを示唆しています。

あわせて読みたい記事

いまの時代だからこそ睡眠から始まる健康経営が重要であることはいうまでもありません。とはいえ健康経営とは社員が働きやすい環境を企業が率先して整えるトータルな取り組みです。たとえば、経済産業省では健康を保持・増進する7つの行動として「快適性を感じる」「コミュニケーションする」「体を動かす」「健康意識を高める」「休憩・気分転換する」「適切な食行動をとる」「清潔にする」を挙げており、これらの行動を日常的に誘発させることが重要だと指摘しています。つまり、スリープテックの施策で社員の睡眠の質に対する直接的なアプローチに限らず、間接的なアプローチも可能です。

たとえば、ITを活用したハイブリッドワークへの対応、業務の効率化、コミュニケーションの円滑化などは健康を保持・増進する7つの行動を好転させるトリガーになりえるのではないでしょうか。社員の労働の効率が上がり、ストレスを軽減できれば、結果的に社員の睡眠時間確保、質の向上といった間接的な効果につながってくるはずです。ITを活用した直接的と間接的、2方向からのアプローチによるスリープテックの推進により、健康経営の取り組みを活性化してみてはいかがでしょうか。

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