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ファイルサーバーとは? NASとの違いや選び方のポイントなどを解説

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コロナ禍以降、オフィス環境は急速に変化しました。テレワークが普及し、インターネットを介してリモートで業務を行うことはもはや当たり前となっています。そのようにオフィス環境が変化するにつれて、社内のファイル管理の方法も変化してきています。本記事ではファイルサーバーについての概要と、NASとの違いや選び方のポイントなどについて解説します。

1.ファイルサーバーとは

複数のコンピューターでファイルを共有

ファイルサーバーとは、同じネットワークに繋いでいる他の人とファイルを共有するためのサーバーです。多くのOSはファイル共有機能が標準で付属しているため、それを用いて構築することも多いです。LANなどのネットワーク上で、異なる端末からでもファイルをダウンロードしたりアップロードしたりできます。

またWindows Serverなどのサーバー用OSでは、Active Directory(Microsoftのユーザー管理機能)による権限管理やRAID構成といった高度なファイルサーバー環境を実現できます。

①ファイルサーバーの仕組みや機能

ファイルサーバーはOSのファイル共有機能を用いてネットワーク上でのファイルの交換を可能とします。単にファイルを共有するだけでなく、高速なデータ通信やユーザー管理、バックアップ、ログ管理などが可能です。

またファイルサーバーにはオンプレミス型とクラウド型があります。オンプレミス型はLANのようなローカルなネットワーク上に自前で設置する方式です。クラウド型のファイルサーバーは、インターネット上にあるクラウドサービスを用いてファイルサーバーを構築する方式です。IaaSやPaaSを利用して自分の好きなように構築してもよいですし、最初からファイルサーバーに特化しているSaaSを使ってもよいでしょう。

②NASとの違い

NASは(Network Attached Storage)の略称で、ファイルサーバーとよく似た機能を持つデバイスです。ネットワーク上の他の端末から見ればファイルサーバーとほとんど同じように利用できます。しかしファイルサーバーとは異なるものです。

NASはストレージデバイスの一種であり、ストレージデバイスにネットワークへの接続機能を付加したものになります。つまり、NASにはネットワーク経由でファイル共有をする機能しかありません。一方で、ファイルサーバーは汎用的なコンピューターであり、ファイル共有以外のサーバーとしての機能も付加させられます。

最近ではNASの機能も豊富になっており、Active Directoryによるユーザー管理が可能な製品なども登場しています。

2.ファイルサーバーの見直しが必要な背景

近年は従来型のファイルサーバーでは不十分な面が多くなってきました。その理由は昨今の働き方の変化にあります。

①ハイブリッドワークなどの働き方の変化

従来のファイルサーバーだけでは対応が難しくなってきているのは、ハイブリッドワークなどの新しい働き方が普及してきたからです。ハイブリッドワーク下では従業員の業務環境は社内外を問わなくなります。

オンプレミス型のファイルサーバーの場合、社外からのアクセスにVPNを使用することが多いです。その際にPCが重くなってしまい、業務に支障がでるといったケースも見られました。また近年ではVPN環境の脆弱性を狙った攻撃も増加しています。安全で快適なファイル共有を行うための環境整備が必要となっているのです。

②ランサムウェアなどの標的型攻撃の増加

近年、企業に対して猛威を振るっているサイバー攻撃の1つがランサムウェア攻撃です。ランサムウェアとはファイルサーバーなどに存在するデータを無断で暗号化し、復号化の条件として身代金を要求する攻撃方法です。その際に、リモートワーク中の従業員端末やVPN機器の脆弱性が狙われることは少なくありません。

ハイブリッドワークなどが浸透する前は、多くのデータはオフィス内の閉じられた空間で保護されていました。それがクラウドをはじめとしたさまざまな場所に拡大しています。企業は柔軟な働き方に対応し生産性を維持しながら、新たな脅威に対して対応をしていく必要があります。

3.ファイルサーバーのメリット

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ファイルサーバーにはさまざまなメリットがあります。改めて見ていきましょう。

①アクセス権を柔軟に設定できる

ファイルサーバーではアクセス制限やファイル単位でのアクセス権を設定できます。上述のようにActive Directoryを使用した細かなユーザー管理が可能です。

②処理の分散化が可能

Windows Serverには分散ファイルシステム(DFS)と呼ばれる仕組みがあります。これはファイルサーバーの負荷分散やアクセスを簡素化してくれる機能です。またDFSでは複数のサーバーを論理的な1つのパスに集約できるため、ネットワーク上の端末から見ると1つのサーバーを扱うようにしてアクセスできます。

③冗長化が可能

冗長化とは何らかの理由でデータが破損した場合に備えて、オリジナルのサーバー機とまったく同じサーバー機を用意し、バックアップを同期しておくことです。冗長化したファイルサーバーの構成を冗長構成と言います。

冗長構成にはいくつかの種類があります。たとえば、

  • アクティブ・アクティブ:2つの同じサーバーを同時に稼働させる構成
  • アクティブ・スタンバイ:片方を稼働させ、もう片方はスタンバイ状態にしておく構成

などがあります。

④セキュリティを細かく設定できる

ファイルサーバーは、通常のPCやサーバーと同様、セキュリティをより細かく設定可能です。たとえば以下のような対策です。

  • IDとパスワードによるアクセス制限
  • ファイルのアクセス権の設定
  • アクセスログの取得と監視

オンプレミスのファイルサーバーの場合は、自社のセキュリティポリシーに合わせて、さまざまなレベルのセキュリティ対策をカスタマイズして実装可能です。

4.ファイルサーバーのデメリット

ファイルサーバーにはデメリットもあります。メリットとデメリットを考慮して運用しましょう。

①サーバー構築にコストが必要となる

オンプレミス型のファイルサーバーの場合、サーバー機の購入や初期設定、サーバー構築を自社でやらなければなりません。購入費用や、人件費などのコストがかかります。

またファイルサーバーはセキュリティ上の細かい設定を必要とするため設定する項目が多く、工数がかさむ傾向が高いです。例えばユーザーグループの作成やアクセス権の設定はユーザーの人数分だけ行わなければなりません。人数が少ない場合はすぐ終わりますが、多い場合にはかなりの手間となるでしょう。

②運用のためのコストが負担となる

ファイルサーバー運用時のランニングコストも注意しなければなりません。ライセンスの費用、ソフトウェアやハードウェアの保守やメンテナンスの費用、セキュリティ対策の費用、サーバーを設置するための費用、サーバーの稼働や空調のための光熱費など、ファイルサーバー本体がエンドユーザーから利用可能なファイルサーバーサービスとして機能するための周辺コストを考慮する必要があります。

またファイルサーバーに限らず、オンプレミス型システムのハードウェアやソフトウェアの構成は、時代が移り変わるにつれて古くなっていくのが常です。パッチ当てのような部分最適だけでは、いずれ時代の移り変わりに耐えられなくなる可能性があります。古くなったファイルサーバーシステムの移行には、膨大な手間とコストがかかるため、なかなか移行できないこともあります。

③リモート対応する場合VPNなどの仕組みが必要

オンプレミス型のファイルサーバーは、多くの場合、会社の建物の中にあり、社内LANに接続されています。社内LANはファイアウォールで守られているため通常は社外からアクセスできません。

そこで、オンプレミス型のファイルサーバーにアクセスするにはVPNなどの仕組みを利用しなければなりません。そのために新たな費用や工数がかかります。

5.ファイルサーバーをクラウド化する方法

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ファイルサーバーのデメリットを解消する方法の1つとしてクラウド化が挙げられます。ファイルサーバーにはオンプレミス型とクラウド型があり、クラウド型のほうが柔軟に運用できます。クラウド型には以下の2種類があります。

①クラウド型ファイルサーバー

クラウド型ファイルサーバーとはクラウド上に構築したファイルサーバーです。AzureやAWSなどのIaaSを利用し、その上に自社でファイルサーバーを構築します。そして、運用を自社で行うことになります。

クラウド型ファイルサーバーのメリットは以下の通りです。

  • 初期費用がかからない場合が多い
  • 欲しいときにすぐ利用できる
  • ランニングコストが安価である

②クラウドストレージ

クラウドストレージはクラウド型ファイルサーバーと似ていますが、少し異なります。クラウド型ファイルサーバーがIaaSの上に自社でサーバーを構築するのに対し、クラウドストレージはSaaSなのが一般的です。

つまりクラウドストレージは構築するまでもなく最初からファイルサーバーとして使えます。また、運用に必要な作業はすべて運営会社がやってくれます。その代わりにクラウド型ファイルサーバーよりはカスタマイズ性において劣るのがデメリットです。

6.ファイルサーバーを選ぶポイント

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ファイルサーバーを選ぶにはいくつかのポイントがあります。

①導入する目的を明確化する

まず、ファイルサーバーを導入する目的を明確にしましょう。導入する目的とは言い換えれば自社の課題です。今現在どのような課題があって、どのように解決したいのか、それを洗い出して明確化しましょう。

「なんとなく」でファイルサーバーを導入すると自社に必要な機能が付いていなかったり、あるいは余分な機能がついてコスト高になったり、運用保守に手間がかかりすぎたりして結局頓挫する事態になりかねません。しっかりと目的を明確化することが必要です。

②利用シーン、利用ユーザーを明確化する

目的が明確化されたら利用シーンや利用ユーザーも明確にしましょう。つまり「誰がどのような状況で何に使うのか」です。とくに利用者の人数や属性、グループの数は明確化しておく必要があります。なぜならアクセス権の設定に必要だからです。たとえば自社の正規メンバーだけが小規模で利用するのと、外部メンバーも含めた大規模なグループで利用するのでは当然選ぶサービスも変わってきます。

③対象となるデータやデータ量を明確化する

どのようなファイルをファイルサーバーに保管するか、それはどれくらいのデータ量になりそうなのかも明確化しておきましょう。ファイルサーバーは冗長構成にできるので、バックアップの自動化ができます。あまりにも大量のデータを扱う場合、手動でのバックアップに非常に工数がかかる場合があります。データ量が大きいほど、ファイルサーバー導入のメリットを活かせます。

④データの特性を意識する

保管するファイルには頻繁に使用されるホットデータと、あまり利用されないコールドデータの2種類があります。それぞれのファイルの使用頻度に応じて最適なツールやその組み合わせは異なります。コールドデータが多い場合は「オブジェクトストレージ」を活用することでコストを最適化できます。

オブジェクトストレージとはデータをオブジェクトとして扱うストレージで、大容量データを安価に保存するのに適しています。オブジェクトストレージのデメリットは速度が遅い点ですが、速度の速いファイルサーバーと組み合わせて導入することにより、それを解消し、特徴を最大限生かせるのです。

⑤セキュリティポリシーとの整合性を確認する

どの機密レベルのファイルを扱うかも明確化しておかなければなりません。機密レベルによって必要なセキュリティ対策が変わってくるからです。また、テレワークでも利用するのか、社内からしか利用しないのかによっても必要なセキュリティ対策が変わってきます。

⑥生産性を損なうリスクがないかユーザー部門とも連携する

ファイルサーバーに限らず、どのようなシステムでもユーザビリティは大事です。ユーザーが使いにくいシステムでは結局利用されなくなって形骸化してしまいます。特にハイブリッドワークなどリモート環境において利便性が落ちないかは、よく考える必要があるでしょう。

そのためには現場のユーザー部門との連携が不可欠です。システム部門だけで決めてしまうのではなく、実際に利用するユーザーの意見を聞いた上で検討しましょう。

⑦費用対効果などをきちんと算出する

要件を満たした上で、どれだけの費用がかかり、どれだけの効果が見込めるのか、事前に計算しましょう。そのうえで、コストパフォーマンスに優れたサービスを選ぶべきです。

ただし、単に値段が安いからという理由だけで飛びつくのはおすすめしません。コストがいくら安くても、使いにくかったり、稼働率が悪かったりすれば、損失となる場合もあります。無料トライアルなどの制度を利用し、どの程度のパフォーマンスが見込めるかも検証して選ぶべきです。

7.まとめ

ファイルサーバーにはさまざまなメリットがあります。ただし、オンプレミス型やクラウド型、オブジェクトストレージなど、さまざまな形態が存在するため、安易に選んでしまうと思ったよりも効果が上がらない場合もあります。ファイルサーバーを選定する際にはポイントを押さえて、十分な検討を行った上で選びましょう。

NTTコミュニケーションズではファイルサーバーに関するさまざまなソリューションを提供しています。お気軽にご相談ください。

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