基礎からわかるGPU 性能・特徴や選び方のポイント

コンピューターの部品の1つであるGPUですが、近年IT業界以外でも耳にする機会が増えています。GPUは、どんな目的のために使用されるのでしょうか。また、企業においてどのような役割を果たすのでしょう。この記事では、GPUの基礎知識や特徴、選び方のポイントについて詳しくご紹介します。

GPUとは

GPUとは

GPUは、Graphics Processing Unitの略で、画像処理装置を意味します。その名の通り、画像を描写するために必要な計算を処理するものです。近年では、画像や映像を利用する機会も増えており、より速く、よりきれいに画像・映像を映すには、GPUが欠かせません。また画像を処理するということは膨大なデータを瞬時に計算する必要があるため、ビッグデータを処理するのにも適しています。

GPUは、データを大量かつ速く処理するために、独特の仕組みをもっています。一番の特徴は、並列処理能力に優れていることです。この能力があることで、複数のタスクを一度にこなせます。

GPUとCPUの違い

GPUとCPUの違い

GPUと似た言葉に、CPUがあります。どちらも処理装置ではありますが、この2つは、目的や処理をする対象、スピードに違いがあります。CPUの目的は汎用的な処理を行うこと、GPUの目的は高速な画像処理を行うことです。

そもそもCPUとは、Central Processing Unitの略で、中央処理(演算)装置を意味します。コンピューターの頭脳として機能しており、逐次計算からデータベースの実行まで、幅広い処理を行います。個々のタスクを集中して処理する、連続的な演算処理能力に長けているのが特徴です。

一方GPUは、内部でコアが連携して動作することで並列処理が行えるため、CPUに比べて圧倒的な処理スピードを誇ります。その差は、行列演算の処理スピードがCPUの10倍ともいわれています。ただし、単純計算に特化しており、幅広い処理には向いていません。

通常コンピューターは、CPUが連続的にタスクを行い、幅広い処理をすることで機能します。しかし、その中で、膨大な単純作業が必要になることがあります。例えば、画像などのデータ処理です。このような膨大な単純作業をCPU1つに任せていると、ほかのタスクが終わるまでに時間がかかってしまいます。そこで、膨大な単純作業を任せるのが、GPUです。つまり、CPUとGPUは、協力してコンピューターを動かしているのです。

スーパーコンピュータの多くはGPUを搭載

スーパーコンピュータとは、複雑で膨大な計算を高速で行う大規模コンピューターですが、この計算を可能にしている機能の1つがGPUです。
たとえば、気候の変動予測や画期的な治療法を見つけるための解析、地震予測など、私たちの身近な問題にもスーパーコンピュータは使われています。そして世界最高水準のスーパーコンピュータの多くにはGPUが搭載されており、計算能力だけでなく人工知能(AI)関連の処理をも支えています。

GPUのデメリット

膨大な量のデータを高速で処理できるGPUですが、難点があるとすれば、発熱の可能性があるという点です。発熱を抑えるために冷却装置が必要となり、それが電力を大きく消費させます。高性能になればなるほど冷却装置や電力も大きくなる傾向があり、音がうるさいといったデメリットも挙げられます。
ただし、GPUの種類によってはこのようなデメリットが緩和されているものもあります。

GPUの種類と特徴

GPUは、グラフィックボードに搭載するもの、CPUと統合されたもの、クラウドと大きく3種類に分かれます。ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを簡単にご紹介します。

グラフィックボード

グラフィックボードは、GPUが搭載された基盤のことをいいます。主にモニターの画面表示をするもので、CPUから指示を受け画像や映像の描写を行います。ビデオカードと呼ばれることもあります。

グラフィックボードは、コンピューターに必ずしも必要な訳ではありません。ただし、追加でGPUを付けることで、画像や映像をさらにキレイに映せるため、3Dゲームなどをコンピューターで行いたい場合は、外付けのGPUが必要です。この場合、GPUを付けるための基盤としてグラフィックボードが使用されます。

このタイプのGPUは性能が高い一方で、発熱量や消費電力が多いといったデメリットもあります。

評判が良いグラフィックボートには、NVIDIAの最上位モデルである「GeForce RTX 3090」などがあります。サイズは大きめですが、多量のメモリーに高性能で、使い勝手も良いようです。

内蔵GPU

内蔵GPUとは、CPUとともにコンピューターに内蔵されているGPUを指します。一般的なPCの頭脳として使われているのは汎用的な処理をするCPUですが、現在ほとんどのCPUは、GPUが内蔵されているCPU統合型GPUです。

単体型GPUに比べ性能は劣るものの、コストが安く、発熱量や消費電力が少ないなどのメリットがあります。高度な画像処理よりも事務作業などに向いているのが特徴です。また、消費電力が少ないため、外出先でも利用できます。

GPUクラウド

GPUサーバーが使えるクラウドサービスを利用すると、クラウド上でGPUを利用できます。この場合サーバーを自社で設置・管理する必要がないため、初期の導入や運用にかかるコストが大幅に低減します。加えて、インターネット経由でリソースが提供されるため、場所にとらわれずに利用可能です。リモートでも利用できることから、時代にマッチした運用方法といえるでしょう。

また、クラウドサービス提供者はその時点で最新、あるいはハイエンド(最上位)のGPUを、サーバーに組み込んでいることがほとんどです。オンプレミスの場合、予算の関係からハイエンドモデルを使えなかったり、数年ごとにGPUを買い替える必要があったりします。クラウド利用であればそれらのことを考えず、最高の環境でGPUサーバーが利用できます。

ただし、目的や用途に合わせたカスタマイズ性は劣ります。またオンプレミスは初期費用がかかりますが、長期的な運用を考えると、トータルのコストが低くなることも考慮すべきでしょう。

このように、それぞれのGPUにメリットやデメリットがありますが、何を基準に選べばいいのかポイントをお伝えしていきます。

GPUの選び方

GPUの選び方

GPUを選ぶときに始めに確認すべきなのが「GPU のモデル(=いつ発売されたモデルか)」です。基本的には、新しいモデルであればあるほど性能が良い、という考え方をします。

ただし、当然ながら最新のハイエンドモデルとなると相応の価格にはなってきます。そのため、ベンチマークやコストパフォーマンスを比較していくことで、予算的に可能な限りの最高スペックの製品が見つけられます。

また、具体的には以下の性能を確認しておくと安心です。

<GPUの数・VRAM容量(グラフィックメモリー)>

複数のGPUを搭載しているほど性能は上がると考えてください。クラウドサービスやレンタルサーバーの製品詳細にはGPUの数も記載されているので、検討の際に確認してみましょう。

ただし、自社でサーバー環境を整備する場合、GPUの増やしすぎには注意が必要です。GPUが増えるごとに電力を消費するうえ、温度管理が困難になります。

またVRAM容量とはGPU専用のメモリーであり、容量が大きいほど、高いパフォーマンスを発揮します。そのため、GPUの性能を測るうえで重要な要素です。

<冷却性能>

適切な熱処理を行えないと、パフォーマンスを低下させる原因になるため、冷却性能は重要です。特にグラフィックボードを利用する場合は、ファンだけでなく放熱効果の高いヒートシンクやヒートパイプなどの部品を搭載しているものもあるので、参考にしてみてください。

<消費電力>

高性能のGPUやグラフィックボードであればあるほど、消費電力は大きくなります。PCの電源ユニットから直接電力が必要なグラフィックボードもあり、その場合は補助電源用のコネクターが必要になることも。このため、消費電力やそれに必要な部品は必ず確認しておきましょう。

<グラフィックボードの動作環境>

グラフィックボードを利用する場合は、サイズや接続端子、PCモニターとの同期なども注意しましょう。特にサイズは要注意です。冷却性能が高いものだとサイズが大きく、PCに取り付けられないこともあります。スロットの幅や数、PCのケースサイズなどをチェックしておいてください。
また、接続端子やモニターとの同期も確認しておくと安心です。

GPUが普及している背景

GPUが普及している背景

もともと画像処理装置であったGPUがここまで普及したのには、その計算能力の高さだけでなく、VR技術や人工知能(AI)の発展も大きく影響しています。

汎用性を高めるGPGPUの広まり

GPUは、画像処理に特化した処理装置だとご紹介しました。もちろん、画像や映像をキレイに映し出すためにも使用されていますが、近年ではその高い処理能力がいろいろな場面で利用されるようになってきました。この画像の処理に必要な計算能力を、ほかの領域でも利用できるようにしたのが「GPGPU」です。

このGPGPUはとても汎用性が高いため、多くの分野に広がりました。たとえば、今やスーパーコンピュータを始めとしたデータ分析のみならず、交通インフラや製造・建築、医療、金融など実に多くの分野でGPUが利用されています。

VR技術の発達

「VR(Virtual Reality=仮想現実)」が発展したのも、GPUが普及した要因の1つです。言うまでもなくVRは現実かのような映像技術が必要になるため、高度なGPUは必要不可欠です。

近年ではゲームやエンターテイメントはもちろん、遠隔地から治療を施す医療や、教室に行かなくても授業を受けられる教育現場、現地に行った気分になれる観光業界などにも利用され始めています。

また、リモートワークで困難になったコミュニケーションギャップを埋めるテクノロジーとしても注目されており、VRは単にゲームを楽しむものではなくなってきています。今後もますます広い範囲で使われることでしょう。

機械学習やディープラーニングに向いている

ディープラーニングは、AIに学習させるために用いられる機械学習の手法の1つです。AIが画像・映像・音声などの認識・判別をしたり、データをもとにした予測などを行ったりするためには、まずデータのインプットが欠かせません。このインプットこそがディープラーニングであり、ディープラーニングを行うことで、AIは自動的にデータの特徴を見つけられるようになります。

ディープラーニングでは、大量のデータを扱います。そこで必要となるのが、データ処理機能の高さです。GPUは、もともと画像を描画するための処理装置なので、計算処理能力、特に並列処理能力に優れています。並列処理は、単純なタスクを大量にこなすのに向いているため、この並列処理能力をもつGPUとディープラーニングは、相性がよいのです。しかも比較的安価で素早くディープラーニングを実行できることもポイントでしょう。

ディープラーニングは、自動車における自動運転や医療、教育など、さまざまな分野で利用されています。今後はさらにAIの発展が加速していくと予想されるため、それに伴いGPUもますます発展していくと考えられます。

このようにGPUが普及した背景にはさまざまな要因がありますが、いずれも衰える兆候はなく、ますます発展していくことでしょう。またそれに伴い、GPUのクラウドサービスも発展を続けるため、多くの企業で導入が可能になるかもしれません。

たとえばNTT Comでは、AI研究開発や3D Rendering、CADやシミュレーション用のeVDI基盤として、GPUプラットフォームを提供しています。NTT ComのGPUプラットフォームなら、高性能なGPUを専有で利用可能です。

NTT ComのGPUプラットフォームは、国内データセンターで提供しているため安心して利用できるほか、月額定額制のため従量課金が発生しません。また、GPUを利用する際の超高発熱にも対応できる最適な環境が用意されています。24時間365日の保守体制や運用サポート体制も万全です。
(GPUプラットフォーム:https://www.ntt.com/business/sdpf/service/gpu.html

GPUは、もともとコンピューターグラフィックスを処理する部品として使われていましたが、近年はAI分野での活用に期待がもたれています。ビジネスにおいて重要性を増しつつあるデータ分析においても、必要な要素の1つといえるでしょう。NTT Comでは、高性能なGPU基盤を国内データセンターで提供しています。導入をお考えの際は検討してみてください。

GPUを使用した高速データ処理は、NTT Comが提供する「インフォマティカ」でも活用されています。このソリューションは、米国Informatica社が提供するデータ統合基盤をNTT Comのセキュアなネットワークで提供するシステムです。

データの利活用では、データ統合が必要不可欠です。しかし、フォーマットの異なるデータと社内に散在するデータを統合することは容易ではありません。さらにすでに自社で複雑なシステムを組んでいる場合は、可視化のプロセス導入に高いハードルがあります。こうした問題を解決するためのソリューションとして、各企業のシステムに合わせたデータ統合基盤の構築が可能です。さらにデータ管理と機械学習プロセスにGPUを採用することで、高速なデータ抽出と処理を行います。

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