イントラネットとは? インターネットやエクストラネットとの違い

入社後の社内研修などで、「イントラネット」という単語を耳にしたものの、意味がよく理解できなかったという人もいるかもしれません。イントラネットは入社後頻繁に利用する機会も多く、意味や目的について早めに理解しておくと便利です。本記事では、イントラネットの概要や特徴、導入するメリットなどについて分かりやすく解説します。

イントラネットとは

まずは、イントラネットの定義や必要とされる背景について解説します。

イントラネットの定義

イントラネット(Intranet)とは、内部(intra)とネットワークを意味する(net)を組み合わせた言葉であり、直訳すると「内部ネットワーク」のことです。企業内など限られた範囲内で利用可能なネットワーク環境であり、ログイン・アクセスできるのも権限のある社員のみに限られます。企業には、社内ルールや人事制度、内部FAQなど、社外には出せないものの全社員には周知したい情報が多くあり、イントラネットはこれらの掲示板・保管庫としての役割を果たします。また、社員向けの緊急ニュースを流すなど、迅速な情報共有を図りたい場合にもイントラネットは非常に便利です。通常利用しているブラウザーから閲覧可能ですが、イントラネット自体はインターネットとは切り離されているため、まったく関係のない人間が検索エンジンを使って自由に情報を調べることはできません。

イントラネットが必要とされる背景

イントラネットは、多くの企業で導入されています。社内の情報共有手段にイントラネットが選ばれる理由は、インターネットと同じ技術を利用したネットワークであり、企業と社員の双方にとって使い勝手がよいからです。企業独自のLANを構築してネットワークを社内に限定する方法もありますが、導入コストやメンテナンスコストがかかります。特に、中小企業では、こうしたコストや専任社員の確保は難しいものです。使い慣れたインターネットと同じ操作方法であれば、社員の操作習得期間の短縮も図れます。これらの理由から、インターネットに準拠したLAN形態が一般的になったと考えられています。具体的な導入メリットについては後述します。

イントラネットと類似するキーワード

ここからは、イントラネットと混同しやすい言葉の違いについて解説します。基礎知識として知っておくと役立つでしょう。

インターネット

インターネット(Internet)とは、相互に接続された(inter)とネットワークを意味する(net)を組み合わせた言葉です。イントラネットが社内専用のネットワークであるのに対し、インターネットはオープンなネットワークです。定義上は、多数のネットワーク同士を集めて相互接続し合うものを指します。通信回線によって世界中のありとあらゆるコンピューターがつながっている昨今においては、インターネットといえば世界規模で相互接続された巨大なネットワークを意味します。検索エンジンやブラウザー機能、電子メール、ネットショッピングなどは、インターネットによってユーザーに提供される代表的なサービスの一例です。

エクストラネット

エクストラネット(Extranet)とは、外部の(Extra)ネットワークという意味です。複数のイントラネットを相互接続し拡張したネットワークのことで、同じようなネットワーク形態としてWANが挙げられます。LANとWANの違いについては、LANが社内や家庭内など一部の限られたエリアで接続できるネットワークなのに対し、WANは遠く離れたエリアと接続するためのものです。日常的に使用されているインターネットは、LANとLANをつないだ世界規模のWANであるといえます。イントラネットを拡張したエクストラネットでは、グループ企業や企業間での取引や情報交換も可能になります。大企業では、VPN技術などを使って本社と海外支社とをつなぐワールドワイドなエクストラネットを構築するケースもあります。

イントラネットの仕組み

イントラネットの基本的な仕組みについても知っておきましょう。イントラネットも、インターネットと同様に、TCP/IPプロトコルを利用したIPネットワークをベースにしたものです。HTTPによるWWWシステム、POP・SMTPによる電子メールシステムが構築されるため、日常的に使用しているブラウザーやメールソフトを介してイントラネットに接続可能です。以下ではこれらの専門用語について解説していきます。

TCP/IPプロトコルを用いたIPネットワークとは

TCP/IPとは、インターネットをはじめさまざまなネットワークにおいて、世界標準的に利用されている通信プロトコルのことです。4層に分かれた通信方法であり、この4層のすべてが正しく機能してはじめて通信を行うことができます。IPとは、複数の通信ネットワークを相互に接続して横断的に通信するためのプロトコル規格です。そのもっとも巨大なネットワークが、インターネットです。

HTTPによるWWWシステムとは

WWW(World Wide Web)とは直訳すると、「世界中に張りめぐらされたクモの巣」を意味します。インターネットアプリケーションの中でもっとも頻繁に使われる仕組みです。TCP/IPネットワーク上にWWWサーバーが常に待機することで、HTTPを使って世界中のサーバーから情報を引き出したり更新したりできるのです。

POP・SMTPによる電子メールシステムとは

POP・SMTPによる電子メールシステムについても簡単に解説しましょう。いずれもメールの送受信に関わるプロトコルです。SMTPはメールを相手のメールサーバーまで届ける「送信」の役割を持ち、POPはメールサーバーにアクセスして自分のPCなどにダウンロードする「受信」の役割を受け持ちます。

イントラネットの特徴

ここからは、イントラネットの特徴について、メリットも交えて解説します。

導入コストが安い

イントラネットの特徴としてまず挙げられるのは、導入コストの安さです。インターネットと同じ技術を利用するネットワークであるため、独自のWANやLANよりも安価にシステムを構築できます。ベンダー間の競争が活発なため、WWWサーバーやブラウザーのソフトが無償だったり、低価格で利用できたりする場合が多いです。

システム構築が容易

インターネットで培われた技術を利用するため、手軽で柔軟なシステム構築が可能です。具体的には、アプリケーションやデータベースとの連携がしやすく、容易にシステムを構築できます。さらに、さまざまなベンダーの製品開発も活発に行われているため、システム連携のハードルは今後ますます下がっていくと想定されます。

短期間で構築できる

インターネットの技術を応用するため、結果的に短期間で構築できるのもイントラネットのメリットです。システムを追加・変更する際にも、サーバー側でシステムを一元管理できます。具体的には、サーバーと新しいシステムとを接続するだけでよく、クライアントの環境を変更する必要がないため、運用担当者の負担も軽減されます。

操作方法が簡単

ここまでは運用する立場からのメリットを紹介しましたが、利用者にとって操作方法が簡単であることもイントラネットの大きなメリットです。イントラネットでは、通常のインターネットと同じように、使い慣れたブラウザーやメールソフトから操作できます。仕様や操作方法を新たに習得する必要がないため、社員への教育も短期間で済み、教育コストも抑えられます。

イントラネットを構築するメリット

ここからは、イントラネットの構築によって期待できる実務的なメリットについて解説していきます。

業務効率化・生産性向上が見込める

まず挙げられるのは、業務効率化と生産性の向上です。アクセス権限があればどの社員でも閲覧できるイントラネットは、迅速な社内情報共有を可能にします。従来、社内の情報共有手段といえば紙ベースの社内報が主流でしたが、情報を共有するまでのタイムラグや訂正の難しさがネックでした。イントラネットであれば、その日のニュースを速やかに全社員に配信でき、情報の更新も簡単です。また、イントラネットに社内のさまざまな情報やデータがアップされていれば、その都度部署の担当者に確認したりメールを送付してもらったりといった手間も省けます。情報やデータを一カ所に集約することで、管理する担当者の作業効率化も図れる点もメリットです。

働き方改革によってテレワークが推進されるなど、多様化が進む近年では、それに合わせた環境整備が求められます。イントラネットも、社内SNSやオンラインミーティングといったコミュニケ―ション機能を統合した「デジタルワークプレイス」へと進化を遂げつつあり、新たなトレンドになっています。デジタルワークプレイスの存在は、時間や場所に依存しない革新的な働き方の実現を大きく後押しします。

コミュニケーションの活性化につながる

イントラネットは、社内コミュニケーションの活性化にもつながります。組織内では同じ部署内で縦軸のつながりを持つことは容易でも、横軸での連携は案外難しいものです。そんなときイントラネットを使えば、他部門に対して自部門の仕事内容や目的を共有でき、理解促進を図れます。仕事における意思疎通が円滑になれば、意思決定までのスピードもアップし、業務改善のノウハウも共有可能です。

また、イントラネットは、双方向のコミュニケーションも促します。紙ベースの社内報では一方的に情報を伝えるだけですが、イントラネット上では社員同士が常に同じ情報を共有しながら、社内チャットなどで相互のやり取りを行えます。運用次第では、役職や仕事上の関係性を超えた幅広い人脈を社内に構築することも可能です。イントラネットは、経営理念や経営層のビジョンの理解浸透にも大いに役立ちます。経営目標を達成するには、組織が目指す方向性や課題について現場も含めた全社員の理解と協力が必要です。

コスト削減につながる

イントラネットの利用によってペーパーレス化が進めば、さまざまなコストを削減できます。まず、紙の資料にかかっていた紙代やインク代、運送などの費用がかかりません。印刷や配布の手間も大幅に削減でき、より少人数で仕事を回せます。

また、ペーパーレス化は、社内スペースの効率化にもつながります。たとえば、社内報や会社案内のように配布対象が広い資料の場合、予備として保管する部数も大量です。何年も保管していけばやがて社内のスペースを圧迫することとなり、処分にも相当な手間がかかります。このように紙からイントラネット上での情報共有に切り替えていくことで、従来の業務プロセスを大きくスリム化でき、その分の運用・管理費や人件費を実現できるのです。

イントラネットを構築するデメリット

イントラネットの構築にはデメリットもあります。導入にあたっては、以下2つの注意点への対処法も検討しておきましょう。

セキュリティ問題

1つ目はセキュリティの問題です。イントラネットのセキュリティ問題には、外部攻撃と内部不正という2つの側面があります。まず、外部からの攻撃については、イントラネットはインターネットと同じ仕組みであるため、誰でも簡単に操作できる反面、セキュリティ面では脆弱です。セキュリティ対策を万全にしておかないと、内部ネットワークに侵入されてしまい、クラッキングされたり、コンピューターウイルスによって内部情報を盗み取られたりする危険性があります。ウイルス対策ソフトに加えて、許可していないアクセスや不正なアクセスをブロックするファイアウォールを設置し、外部からの攻撃を防衛する場合が多いです。

次に内部不正については、全社員があらゆる情報にアクセスできる状況は便利な一方、大きなリスクを伴います。不正に情報を引き出されたり、改ざんされたりする可能性はゼロではありません。故意ではなくても、人為的なミスによってデータを変更・削除する事故が起きないとも限りません。安全な運用にするには、全社員がアクセス可能なファイルの選定、閲覧限定か更新可能かといった権限の管理、アクセス履歴の管理などについて細心の注意が必要です。

ネット障害発生のリスク

2つ目は、ネット障害発生のリスクです。万が一、長時間ネット障害が発生してしまい、復旧するまでは一切のデータが閲覧できないという事態になれば、会社全体の生産効率が大幅に低下してしまいます。全社員が利用するものである以上、ネット障害が起きるとその影響も甚大になるのがイントラネットのデメリットでしょう。イントラネットを構築する際は、運用ルールだけでなく、いざというときの保守・サポート体制も万全にしておくことが大切です。すぐに対応できる社内体制を整えておくか、外部の業者と保守・サポートの契約を結んでおくことをおすすめします。復旧までに時間がかかればその分だけ、ビジネスチャンスを失うことにもなりかねません。

イントラネットは、全社員への迅速な情報共有はもちろん、部署の垣根を越えた社内交流も促進します。テレワークの普及に伴い、場所や時間の制限なく利用できるイントラネットの存在価値は、今後ますます高まっていくと想定されます。デメリットについてはしっかりと対策を採り、会社全体の生産性向上につながる運用を心がけましょう。

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