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クラウド化の障壁を乗り越える「クラウドジャーニー」とは

現代企業が抱える喫緊の課題のひとつが「システムのクラウド化」です。クラウド化は、システム運用コスト低減、可用性と事業継続性の確保、新規事業・サービス開始時の迅速な環境構築、AI・IOTなど最新技術との融合によるビッグデータ活用など、さまざまなメリットをもたらします。しかし、完全なるクラウド化に至るまでには、セキュリティ課題や経営層の理解など、いくつかの障壁が存在するでしょう。こうした障壁に対し、包括的な解決策となるのが「移行のための計画」、つまり「クラウドジャーニー(クラウド移行までの旅路)」です。ここでは、クラウドジャーニーの解説と、クラウド化のメリットと課題、導入を検討すべきソリューションなどを紹介します。

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1. クラウド化への道筋を描く「クラウドジャーニー」とは?

ククラウドジャーニーとは、企業における「クラウド化(クラウドネイティブ化)への継続的な取り組み」を表した言葉です。オンプレミスをメインとした既存システムをクラウドに置き換え、ビジネスモデルや業務プロセスを「クラウドありき」の状態へ移行させるには、綿密な計画と複数のアプローチが必要です。これらを「旅路(ジャーニー)」に例え、クラウドジャーニーという言葉が生まれました。

クラウドジャーニーのステップ

クラウドジャーニーには通常、「計画立案と試行」「全社展開」「段階的かつ本格的なクラウド移行」、「クラウドへの最適化(クラウドネイティブ化)」という4つのステップが含まれます。各ステップの内容を順に見ていきましょう。

● 計画立案・試行

このステップでは、クラウド化を見据えた計画立案と、必要な情報収集・学習を行います。まず、TCO分析を通じて主要なクラウドベンダーを比較し、導入費用や運用コスト、情報を集めます。その後、実際にデモやフリーミアム(無料体験)を通じてUIの操作性やビジネス・業務への適合性などを吟味し、自社ビジネス・業務にマッチしたソリューションを選定します。また、ごく小さな規模で実際にクラウドソリューションを導入し、検証(PoC)を行うことも大切です。このとき、社内の有識者にもクラウドを体験してもらい、その有用さを共有しておくと、後々の全社展開がスムーズに進みます。最終的には、ごく小規模での実験的な導入を行い、PoCを通じて効果や紅葉、技術的な観点からの実現可能性を検証していきましょう。

● 全社展開

このステップは、クラウド化の「基礎固め」といえます。トライ&エラーを繰り返しながら徐々にクラウドを社内に普及させていく段階です。小規模実験およびPoCの結果をうけ、保証のとれた部分から全社的に展開して試験運用を開始します。同時に、ガイドラインや共通基盤の整備、クラウドソリューションを含めたシステム構築、既存システムとの運用統合(接続、連携)、セキュリティ及びコンプライアンス整備なども並行します。

● 本格的な移行

社として「クラウドへの移行」を宣言し、全社的に完全なクラウド移行を目指し、推進するステップといえます。IT戦略の中でクラウドの位置づけを明確にし、既存システムを順次クラウドへ移行させつつも、実績・ナレッジを積み重ねていきます。人材育成や情報共有の仕組みも、このステップの中で行いたいところです。また、オンプレミス部分(データセンター内のハードウェア資源や自社保有設備)は徐々に縮小させていくことになります。移行ステップが正常に進めば、運用コストの削減や人材配置の最適化が促進され、社全体が利益を出しやすい体質へと変化していきます。

● クラウドへの最適化

社としての標準の選択肢が「クラウド」になり、クラウドありきの組織・ビジネスモデル・業務プロセスへと変化していくステップです。クラウドファースト、クラウドネイティブといった概念に近いかもしれません。また、運用の自動化やセキュリティ強化、クラウドに合わせた組織改革などを行うこともあります。

2. クラウドへ移行するメリット

2. クラウドへ移行するメリット

このようにクラウドジャーニーは、クラウド化への道筋を明確に示す考え方です。では、クラウド化によっておこるメリットとは具体的に何でしょうか?クラウド化のメリットを再確認すると、次の6つが挙げられます。

運用保守業務の効率化

クラウド化によって自社保有のハードウェア資源が著しく減少すれば、自然と運用・保守業務が削減されます。また、運用・保守業務の外部化(アウトソース)も容易になり、社員の残業・休日対応の低減につながるでしょう。これは、2019年4月から施行された働き方改革法案(残業時間の上限規制や休憩時間の確保)への対策としても有効です。

セキュリティリスクと対策コストの低減

サイバー攻撃の手段は年々高度化・巧妙化しており、常に脆弱性(セキュリティホール)への監視と対応が求められます。クラウドならば、日々セキュリティが世界標準をベースとしてアップデートされ続けており、オンプレミスに比べて安価かつ少ない手間でセキュリティレベルを維持できます。

TCOの削減

システムの総所有コスト(TCO)の観点からも、クラウドは優秀です。ハードウェア調達、インフラ構築などの費用が必要なく、保守運用コストも最低限で済むため、TCOが大幅に縮小できるでしょう。

キャパシティプランニングが容易

オンプレミスで非常に難易度が高い作業であった「キャパシティプランニング」も、クラウドならば比較的容易です。必要なときに、必要な分だけリソースを継ぎ足していけるクラウドならば、インスタンスのオン・オフでリソースを調整できるため、能動的にコストをコントロールしやすいでしょう。

事業立上げスピードの向上

クラウドによる新規システムの構築は、小規模であれば数日程度で実現可能です。迅速なスモールスタートから軌道に乗った後のスケールアップまで、柔軟に対応できます。さらに、撤退のコストも最小限で済むため、オンプレミスよりも気軽にトライ&エラーを繰り返し、ビジネスの成功パターンを見出しやすくなります。

BCPが強化される

複数のクラウドを利用すれば、バックアップ、スタンバイ環境の強化が容易になります。これはRTO(目標復旧時間)の短縮を実現し、結果的にBCPの強化につながるでしょう。

3. クラウド移行時の課題と勘所

3. クラウド移行時の課題と勘所

実際にクラウド化を推進すると、さまざまな課題・障壁に出現します。ここでは、その課題と対応策、勘所などを整理して紹介します。

クラウド移行時の課題

● 上層部との軋轢

経営層の知識不足、理解不足による計画進行の遅延などがあります。ただし、これはクラウドジャーニーにおける最初のステップにおいて、「計画立案・試行」によって対策可能です。

● 社内のセキュリティ基準がクラウドに非対応

クラウドのセキュリティ品質が過小に評価されていたり、対策が必要な範囲を理解していなかったりするとセキュリティ基準がクラウドに最適化されません。クラウドジャーニーの「全社展開」において、クラウドのセキュリティ基準や評価項目(ISO/IEC 27017、FISC安全対策基準など)を共有していき、セキュリティに関する誤解を解いていきましょう。

● クラウド対応人材、スキル不足

クラウドが根付いていない組織では、クラウドへの移行スキル、運用保守スキルを持った人材が不足しがちです。クラウドジャーニーにおける「全社展開」の段階で人材育成に注力していきましょう。

● 通常の運用負荷が高く、移行のリソースを確保できない

もしかすると、リソースではなく「社の認識」が原因かもしれません。クラウドジャーニーが適切に進めば、移行作業の優先度が高くなり、通常の運用作業とのバランスも確保されていくはずです。まずはクラウドジャーニーにおける「本格的な移行」を開始し、移行に注力する体制・期間を設けることが必要ではないでしょうか。

● サーバー以外の対策

DockerやKubernetesといったコンテナ技術を用いた開発環境の仮想化や、ネットワーク仮想化(SDNやNFV)への対策も必要です。これらは、個別に設計・構築が必要なことから、適宜外部のサービスを使って効率化を図っていきましょう。

クラウド移行時の勘所

● クラウドベースのネットワークサービスを活用

クラウド化が進み、マルチクラウド環境が構築されると、クラウドサービス同士を接続するネットワーク設計・構築作業が発生します。これは利用者側で行うべき作業です。そこで、クラウドサービス・データセンターなどをセキュアに相互接続しつつ、運用管理を一元化できる「クラウドHUB」の導入を検討してみてください。

● セキュリティ対策のアウトソースも効果的

クラウドジャーニーを進める中で複数のクラウドサービスが入り乱れると、どうしても「クラウドサービスごとのセキュリティレベル格差」が生じます。こういったセキュリティ問題に対応するには、自社体制の構築に加えて外部の「セキュリティサポートサービス」を活用してみてください。セキュリティサポートサービスには、ログ収集や原因究明、専門家への相談などが含まれています。自社のセキュリティ体制が整うまでの心強い味方になってくれるでしょう。

4. まとめ

この記事では、クラウドジャーニーの解説とクラウド化のメリット・課題などを解説してきました。クラウドジャーニーは、クラウドのメリットを最大化させるため手順です。すでにマルチクラウド・ハイブリッドクラウド環境を運用していても、運用保守の負担増や人手不足により、クラウドの恩恵を享受できていない可能性があります。クラウドネイティブな環境を目指し、クラウドジャーニーを見直してみてはいかがでしょうか。また、必要に応じて外部サービスの活用もおすすめです。

この記事の目次

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