NTTコミュニケーションズ
アプリケーションサービス部
田村 昌之
2月26日付けの記事では、電話とテキストをAIで変換する新たなコミュニケーションサービス「COTOHA Voice DX Basic」をご紹介しました。「COTOHA Voice DX」には、実は「Premium」という兄弟プランがあります。
こちらは、オペレーターの電話応対業務をAIが実行してしまう自動応対サービスです。すでに、ガス会社や保険会社、OCNのコンタクトセンターなどさまざまな企業に導入され、人間に替わって電話でお客さま対応を行っています。数年前は音声の認識精度や回答精度から実現は難しいと考えられていたサービスですが、今やその精度は90%に至る事例も*1!
本記事では、コンタクトセンターが抱える「人材不足」「応対率の改善」といった課題に正面から向き合い解決する、「COTOHA Voice DX Premium」をご紹介します。
*1・・・精度は案件により異なります。また運用・チューニングにて継続的な改善を行っています。
――どのようなサービスか教えてください。
三代澤さん:COTOHA Voice DX Premiumは、お客さまからの電話での問い合わせをAIが自動応対するソリューションです。本来、コンタクトセンターのオペレーターが行う電話応対業務を、COTOHA Voice DX Premiumが情報のヒアリングから各種手続きの処理まで実行いたします。
――お客さま企業のどのような課題に対して提案していますか。
小笠原さん:昨今のコンタクトセンター運営において、オペレーターの採用難、教育の稼働・負荷の増加、応対チャネル多様化と問い合わせ数増加などから労働力不足の課題がありました。また、新型コロナウイルスの影響による、3密対策によるファシリティー不足の発生、パンデミック対策/BCP検討の必要性の増加などから、お客さま内でAI・テクノロジーの活用検討が加速されました。オペレーターの電話応対業務を代替できるCOTOHA Voice DX Premiumは、そういったコンタクトセンター運営におけるお客さまのお悩みを解決できるサービスです。
吉岡さん:その他に、お客さまの「顧客接点を拡大する」「機会損失を減らす」という取り組みにも寄与しています。例えば、受発注を行うコンタクトセンターの営業時間が9時から17時の場合、17時以降は電話で注文を受け付けることができません。でもCOTOHA Voice DX Premiumはコンタクトセンターの営業時間外も電話での注文受付や手続き処理を完結できる仕組みなので、これらのお客さまの課題解決にも寄与することができます。
――本サービスをつくるきっかけは何だったのですか。
福田さん:提供開始をした2018年には、テキストで自動応対するチャットボットは数多くリリースされていましたが、音声AIとAPI/RPAによるオペレーターの電話応対業務の自動化ができるソリューションは、まだ市場にほとんどなく、NTT Comにとって参入価値があるという感覚がありました。ただ一方で、フリーダイヤル/ナビダイヤルの強力なアセットはありつつも、当時のボイス&ビデオコミュニケーションサービス部内ではこの分野のノウハウは乏しかったため、お客さまに提案をしながら、提案手法などの蓄積や、知的財産権で揉めがちなAI関連の契約書の整備、課金方法検討などを手探りで進めていったところが一番の苦労でした。
――現在、具体的にどのような導入事例がありますか。
宮下さん:大阪ガス様と損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)様の2つの事例をご紹介します。
大阪ガス様には、2020年4月からガス設備調査の訪問日時の変更業務にCOTOHA Voice DX Premiumを導入いただき、現在も稼働中です。お客さまの課題は、ダイヤルプッシュ入力に不慣れな高齢者などにもご利用しやすい電話受付サービスのご提供と、窓口サービスの利便性向上でした。大阪ガス様は元々、デジタル化の進展に伴い、従来のコンタクトセンターでの電話受付に加え、インターネット受付やチャット受付を導入するなど、お客さまサポート窓口の拡充に努めていました。さらにCOTOHA Voice DX Premiumを導入し、AIとの自然な会話で日時変更の手続きを可能にし、複雑な操作に不慣れな方にもやさしい自動音声応対による電話受付で、お客さま満足度の向上を目指します。
現在はコンタクトセンターの営業時間内のみAIが利用されていますが、今後は営業時間外にも拡大することや、訪問日時の変更以外の業務をAIに対応させることなどをお客さまと議論しています。
――損保ジャパン様の事例を教えてください。
福田さん:損保ジャパン様は2020年6月に災害時の保険受付業務でPoCを実施いただきました。近年多発する大規模災害時に、ご契約者のお客さまから一時的に大量のお問い合わせがありましたが、損保ジャパン様のコンタクトセンターでは電話を取り切れず、お客さまを長時間お待たせしてしまうケースが発生していました。そのような過去を踏まえて、お客さまをお持たせしない災害時の受付体制の実現を求められており、AI自動応対の導入検討のための実証実験に至りました。
実験では、お客さまがコールセンターに電話し音声ガイダンスに従って受付に必要な情報をお話しいただくと、対話型AIがヒアリングし、受付を完結する仕組みをご提供しました。ヒアリングした情報はテキスト化され、データ連携することができ、お客さまご自身でCOTOHA Voice DX Premiumにて保険受付を完了できる結果が得られました。また、損保ジャパン様で手配された外部の消費生活アドバイザーの利用者からも「実用性がある」という評価を頂きました。 現在、災害時の保険受付業務の本格導入、および別の用途でのご利用をご検討いただいております。
――他社と比べて、どのような強みがCOTOHA Voice DX Premiumにはあるのでしょうか。
宮下さん:強みはアーキテクチャーと提供モデルの2点です。
まずアーキテクチャーですが、AIエンジンを冗長構成にして途切れない仕組みをご提供しています。競合他社はAIエンジンがシングル構成であり、定期メンテナンス時や故障時などは自動応対の稼働を停止させる必要があります。その点、COTOHA Voice DX Premiumは音声認識・意味意図理解・音声合成のそれぞれの構成において、異なるAIエンジンを採用し、冗長化しています。例えば、音声認識エンジンはメインにエンジンA、サブにエンジンBを、意味意図理解エンジンは、メインにエンジンC、サブにエンジンDを使用する構成です。そのため、メインのエンジンのメンテナンスや故障時も、サブのエンジンが稼働しますので、途切れない仕組みをご提供できます。さらに、名前や電話番号などの発話内容ごとに認識率の高い最適なエンジンを選定し、お客さまにご提案をいたします。お客さま要件やセキュリティ要件などに応じて、エンジンを柔軟に組み合わせてご提供することが可能です。
次に提供モデルですが、お客さま状況を踏まえたコンサルティングと自動応対の業務運用が特長です。導入前にお客さまのコンタクトセンター運用状況や業務内容をヒアリングし、理解した上で自動応対化する業務の選定と課題解決のご提案を実施いたします。また単なるツールだけではなく、導入後の自動応対ソリューションの運用・保守までがご提供範囲となります。プロジェクトメンバーが定期的に応対状況を分析し、精度の維持向上に向けたチューニングを実施し、お客さまが困ることのないよう手厚くサポートします。
――導入まではどのような進め方になるのでしょうか。
三代澤さん:自動応対化する対象業務の要件、システム要件、セキュリティ要件などを確認し、お客さま課題をどのように解決するのか、ご提案いたします。お客さま側でもCOTOHA Voice DX Premium導入にあたり、コールセンターの業務フローなど詳細確認が必要となりますが、事前に要件が整理できていれば、ご発注後は最短3カ月ほどでご利用開始が可能です。お客さまのご要望、業務要件、システム連携要件によりリリースまでの期間は変動します。
――初めて導入を検討されるお客さまは不安も多いと思いますが、導入前はどのようなサポートを行っているのでしょうか。
小笠原さん:導入前は、AI応対業務選定においてコンサルティングいたします。どういった業務がAIに向いているか、どの業務がお客さま課題の解決につながるのかなど、状況や要望を伺いながら検討を進めます。FAQ対応の場合、既存のFAQをご利用になりたいというお客さまも多くいらっしゃいますが、チャットボットのようにテキストで解決できるものと電話で解決できるものは異なる内容・シナリオとなるため、音声で自動応対する場合はどのようなフローが良いかを含めてご提案します。また、人間のオペレーターのような会話を目指しつつ、今までのノウハウを生かし、AI自動応対に合った応対フローをご提案します。
――導入後どのようなサポートを行っているのでしょうか。
福田さん:運用開始後、AIのチューニング・学習などの運用やシステム保守を含んだマネージド型にてご提供します。運用方法が分からない・応対精度を上げたいが運用する人間がいない、といったお客さまのIT人材不足の課題にも対応したサポート体制です。
なお、AIの応対精度を向上させるための運用として、発話パターンのゆらぎ登録などのチューニング作業と応対フロー・スクリプトの改善を行っています。これらの作業は機械的にできないものが多く、人手で大量のデータ確認が必要で、対応もお客さまそれぞれで異なるため、時間と手間がかかります。また改善についてはやってみないと結果がわからない場合もあり、アジャイル的に試行錯誤を繰り返して精度向上を行っています。導入後数カ月間は、頻繁にお客さまと意見交換しながら精度向上・完了率向上を図ります。
――最低利用期間はありますか。
小笠原さん:前の説明の通り、導入後の改善活動により完成度を高めていくため、PoCは精度向上の状況・経過が見られる3カ月間程度を推奨しております。これはあくまで目安であり、お客さまの状況やご要望に応じ、柔軟に対応します。また、本格導入は1年契約でお願いしております。
――最後に、今後の取り組みについて教えてください。
宮下さん:COTOHA Voice DX Premiumと高い日本語処理能力を持つCOTOHA® Virtual Assistant を連携したモデルで、人間の会話に近い自然対話ができる電話応対の実現に向けて開発を進めています。
例えば、今のCOTOHA Voice DX Premiumはお客さまのお名前、電話番号、生年月日など一つずつヒアリングして情報を確認する仕組みですが、COTOH® Virtual Assistantとの連携モデルが実現できると、氏名(フルネーム)、電話番号、生年月日などの複数項目の同時ヒアリングができるようになり、通話時間の短縮にもつながります。
また、AIによる電話応対のソリューションはまだ認知度が低く、電話をかけてこられたお客さまがAIの応対と分かると途中で電話を切ってしまうこともありますが、機械的ではないお客さま応対の実現によって、より多くのお客さまに利用いただける機会を創出できると考えています。
さらには、音声・テキストの両チャネルに一つのAIエンジンを活用することによる運用面での効率化や、音声・テキストのリアルタイムの切り替えといった新しいスキーム創出などのシナジー効果も連携モデルに期待しています。
吉岡さん:ありがたいことに多くのお問い合わせを頂いており、お客さまの関心が高いソリューションです。コンタクトセンターの運営にお悩みのお客さまへ、初回ソリューション説明やヒアリングなどから支援させていただきます。お気軽にお問い合わせください。
◆COTOHAシリーズ
NTTコミュニケーションズアプリケーションサービス部
宮下 芹奈
人に代わってAIが電話応対業務を行うソリューション「COTOHA Voice DX Premium」を担当しています。多くのコンタクトセンターのDX化を実現しており、お客さまからも好評です。AI技術を活用し、お客さまの課題を解決します!
NTTコミュニケーションズ
アプリケーションサービス部
田村 昌之
2020年3月に先行リリースし、4月にツール提供と合わせてニュースリリースした、AI...
2020年11月11日
NTTコミュニケーションズ
アプリケーションサービス部
泉 陽子
NTTコミュニケーションズ
アプリケーションサービス部
吉川 みのり
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