ネットワークトラフィックが増加する原因や対策方法について解説


ネットワークトラフィックとは、社内外のシステム間でやり取りされる通信データの総量を指します。
デジタル化が進む現代のビジネス環境においては、トラフィックの増加が企業のネットワークのパフォーマンス低下やセキュリティリスクの要因となるケースが少なくありません。
この記事では、「ネットワークトラフィックが増加する原因」と「その対策方法」について、企業の情報システム部門が知っておくべきポイントをご紹介いたします。
トラフィックとは
トラフィックとはもともと交通量を表す言葉ですが、ネットワークにおける「トラフィック」とは、情報システム同士でやり取りされる通信データの量、すなわち「通信量」のことを指します。
Web会議やクラウドサービス、業務システムの利用など、企業内で日常的に発生するすべてのデータ通信が対象となります。
この通信量は「bps(bit per second)」という単位で計測され、たとえば「1Gbps」は1秒間に1Gのデータを送受信できることを意味します。
トラフィックが増加するというのは、同じ時間内にネットワークを流れるデータの総量が増えることを意味し、LAN/WANといった社内ネットワークやインターネット回線の帯域(通信容量)を圧迫する原因になります。
ネットワークトラフィックの増加による影響
ネットワークトラフィックが増加すると、企業のITインフラ全体にさまざまな影響を及ぼします。
特に、以下のような問題は、日常業務の生産性やセキュリティ、事業継続性に深刻な影響を及ぼすため、早期の対応が求められます。
ネットワーク遅延と業務の停滞
トラフィックの増加によりネットワークが混雑すると、通信速度の低下やパケットロスが発生しやすくなります。
特に、Web会議やオンラインストレージ、業務用SaaSなど、リアルタイム性が求められるサービスでは影響が顕著で、画面のフリーズやダウンロードのエラー、通信切断といったトラブルにつながってしまいます。
これらは業務の進行を阻害し、結果として従業員のストレスや生産性低下を招く原因となります。
業務アプリケーションの不安定化・停止
ネットワークトラフィックの急増は、社内の業務アプリケーションの動作にも直接的な影響を与えます。特にオンプレミス環境やVPN接続に依存するシステムでは、一定の帯域を超えた時点でレスポンスが著しく悪化し、システム全体が不安定になるリスクも存在します。
最悪の場合、アプリケーションの一時的なダウンや処理遅延が発生し、業務に支障をきたすケースもあります。
セキュリティの脆弱化とインシデントリスクの増加
トラフィックが増加すると、それに紛れて悪意のある通信が混在するリスクも高まります。
なぜなら、ネットワークトラフィックが増加しているということは、それだけその企業が利用するウェブアプリケーションやクラウドサービスも増加していると考えられ、攻撃者が狙える脆弱なポイント(例:APIや未保護のエンドポイントなど)も増加しているということだからです。
また、ネットワークが複雑化するほど可視性が低下し、異常検知やインシデント対応のスピードも鈍る傾向にあり、インシデントリスクが増加します。
コスト増とインフラ投資の非効率化
トラフィック増加への場当たり的な対応(例:帯域の一時的な増強や機器の追加導入)は、コスト増につながります。
インフラ全体の最適化戦略がないまま投資を繰り返すと、IT予算を圧迫し、本来注力すべきDXや新規施策への予算不足を招く懸念も生じます。
ネットワークトラフィックが増加する原因
ネットワークトラフィックの増加には、複数の要因が複雑に絡み合っていますが、特に以下の4つの要素は、企業ネットワークにおいて日常的かつ継続的に影響を与えている代表的な原因といえます。
データ量の増加
近年、業務データの量は急速に拡大しています。高画質の画像・動画、センサーデータ、ビッグデータ、さらには生成AIによるファイル生成など、従来とは比較にならないほどのデータがネットワーク上を行き交うようになりました。
特に、ビジネスにおけるデジタルシフトが進む中、日々の業務で生成・活用されるデータ量は、従来のネットワーク設計を大きく上回る水準に達しています。
たとえば、社内会議の録画やハイブリッド勤務によるファイル同期、画像付きレポートの共有などは、業務効率化に貢献する反面、確実にネットワークへの負荷を増大させています。
クラウドサービスなどの利用
SaaS・IaaS・PaaSといったクラウドサービスの普及は、企業のIT活用における柔軟性とスピードを飛躍的に高めました。
しかし、これに伴い、社内ネットワークを経由して外部クラウドにアクセスする通信量が増加し、結果としてネットワークトラフィック全体が肥大化しています。
社外からのアクセスの増加
テレワークや外出先からのVPNアクセス、モバイルワークの常態化も、トラフィック増加に拍車をかけています。
社外から業務システムやクラウド環境にアクセスする機会が増えたことで、従来のネットワーク設計では対応し切れない事態が頻発しています。
サイバー攻撃やマルウェアによるシステム感染
ネットワークトラフィックの異常な増加は、サイバー攻撃やマルウェアの兆候である可能性もあります。
特にDDoS(分散型サービス拒否攻撃)やボットネット感染などは、大量の不要な通信を発生させ、正規のトラフィックを妨害する要因になります。
また、マルウェアが内部ネットワークで拡散を試みる際にも、通常とは異なる通信量のピークが見られることがあり、システムの遅延や停止、さらには情報漏洩などの深刻なインシデントにつながるリスクが高まります。
これらの原因を複合的に把握し、トラフィックの変化をリアルタイムに監視・分析することが、現代の企業ネットワークにとって欠かせない要件となっています。
ネットワークトラフィックの増加を防ぐための対策方法
ネットワークトラフィックの増加に対処するためには、上記のような「原因を把握する」だけでは不十分です。
ここでは、情報システム部門が取り組むべき代表的な対策方法を4つご紹介します。
ネットワークトラフィックの監視
まず欠かせないのが、トラフィック状況を「見える化」することです。
ネットワーク監視ツールを導入し、通信量の増減や異常パケット、特定プロトコルの占有状況などを定期的に把握することが、ボトルネックやセキュリティリスクの早期発見につながります。
代表的な手法としては、SNMP(Simple Network Management Protocol)やWMI(Windows Management Instrumentation)、フロー監視(NetFlow/sFlowなど)によるトラフィック解析があります。
これらを活用することで、利用状況の傾向分析や、問題の根本原因の特定が可能になります。
トラフィックの負荷分散
通信が一部のネットワーク経路に集中すると、過負荷による遅延や故障が発生しやすくなります。このため、ネットワーク全体に負荷を分散させる「ロードバランシング(負荷分散)」の仕組みを導入することが効果的です。
Webトラフィックの分散にはL7ロードバランサ、VPNアクセスには複数ゲートウェイの設定、クラウド接続にはインターネットブレイクアウトの導入など、用途に応じた分散戦略を設計しましょう。
回線の増強
恒常的な帯域不足が見られる場合は、物理的に回線のキャパシティを増強することも有効です。たとえば、従来の1Gbps回線を10Gbpsや専用線に切り替えることで、トラフィック処理能力を大幅に向上させることができます。
ただし、単純に回線を増やすだけでは問題が解決しないケースも多いため、現状のトラフィック傾向と今後の増加見込みを踏まえた上で、最適な増強プランを設計する必要があります。
ネットワーク機器の増強
ルーターやスイッチといったネットワーク機器の性能がボトルネックになっているケースも少なくありません。
特に、旧型機器では処理能力やセキュリティ機能が不十分なことが多く、通信遅延やトラフィックロスの原因になります。
そのため、QoS(Quality of Service)やトラフィックシェーピングなどの機能を備えた最新機器への更新が効果的です。
また、SD-WANのように複数回線を柔軟に制御する仕組みを導入することで、ネットワークの最適化と運用負荷の軽減が両立できます。
まとめ
ネットワークトラフィックの増加は、今や企業のIT基盤において避けられない課題の1つとなっています。DXの推進や働き方の多様化、クラウドサービスの活用、AIやIoTといった新技術の導入が進む中で、トラフィックの総量は今後も右肩上がりで増加していくことでしょう。
トラフィック増加の原因は多岐にわたり、それに伴うリスクも複雑化しています。通信遅延やシステム故障、セキュリティインシデント、そして運用コストの増大など、情報システム部門にとって見逃せない問題ばかりです。
これらに対処するためには、ネットワークの可視化・監視を徹底すると同時に、帯域の適正化や機器の最適配置、そして中長期を見据えた構成の見直しが求められます。
また、ネットワークインフラの専門性が高まる中、すべてを自社だけで担うことが難しい場合には、信頼できるマネージドサービスの活用も有効な選択肢となります。
たとえば、ドコモビジネスが提供する「X Managed(クロスマネージド)」は、ネットワーク監視・運用・故障対応を包括的に支援するサービスです。企業の情報システム部門が抱える課題を根本からサポートします。限られたリソースで高度なネットワーク運用を実現したい企業におすすめのソリューションです。
トラフィック増加に対処したい時など、ぜひ解決策の1つとして導入をご検討ください。