1.概要
1-1.本レシピで実現できること
本レシピでは、高精度な位置情報を知ることができる端末RTK-GNSSに対応したGNSS受信機とアンテナおよびdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスを用いることで、通常数m誤差が出る位置情報を数㎝単位の精度で高精度に位置情報を取得できます。こちらのレシピを応用することで、一般的な利用方法に限らず、人の安全確認や、物の正確な位置情報把握、農機や建機の自動運転や自動操舵として利用されるなど、産業用としても利用できます。本レシピでは mobile GNSS(RTK-GNSS対応端末)とdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスを利用して、正確な位置情報を取得し続ける仕組みをご紹介します。
GNSSとは
GNSS(Global Navigation Satellite System)は人工衛星を利用し、地上の現在位置を計測するためのシステムであり、日本のみちびきやアメリカのGPS、ロシアのGLONASSなど衛星測位システムの総称を表します。(詳しくは国土地理院を参照:GNSS測位とは | 国土地理院 (gsi.go.jp))
このコンテンツの進め方
- 上から内容を読み進みながら作業を行っていきます。
- 本コンテンツは現状のままで提供され、NTTコミュニケーションズ株式会社は、誤りがないことの保証を含め、明示であると黙示であるとを問わず、本コンテンツの記載内容につき、いかなる種類の表明も保証も行いません。
- 掲載情報の閲覧及び利用により、利用者自身、もしくは第三者が被った損害に対して、直接的、間接的を問わず、NTTコミュニケーションズは責任を負いかねます。
- 本コンテンツを実践する中で用意された機器、利用されたサービスについてのご質問は、それぞれの機器やサービスの提供元にお問い合わせをお願いします。機器やサービスの仕様は、本コンテンツ作成当時のものです。
- NTTが提供する機器・サービスについてのご質問はフォームで受け付けております。以下のサイトに記載した先へお問い合わせください。機器・サービスご利用前の導入相談はドコモビジネスコンタクトセンター に、サービスのご用開始後のサポートは、「docomo IoT GNSS位置情報サービス」に記載のメールアドレスへお問い合わせください。
1-2.所要時間
約60分
1-3.所要費用
概算費用: 約7~21万円
- 概算費用: ハードウェアやdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスを始めとした各種サービスの概ねの費用 (送料などの付帯費用や無料枠適用は考慮しないものとしています)
1-4.使用するサービス
本レシピでは、「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」を利用いたします。サービスを通じて全国に設置された基準点の正確な緯度経度などの位置情報とGNSS衛星(GPSやみちびきなどの衛星)から取得する位置情報のずれから位置補正情報を算出いたします。Network RTK 方式 によりインターネットを通じて位置補正情報をご利用機器に受信することにより、測位する位置情報及び位置補正情報を活用し解析することで、数cmの精度で高精度な位置情報を知ることができます。
緑線が実際に移動した時の線で、青いピンが「測位点」です。
1-5.準備する物
本レシピを行うためには以下のものをご用意ください。
ハードウェア
品名 | 数量 | 価格 | 備考 |
---|---|---|---|
接続用インターネット (simもしくはWi-Fiルーター) |
1 | ― | 本レシピでは、IoT向けモバイルデータ通信サービス IoT Connect Mobile®Type S のsimを活用いたします。 |
パソコン(設定用) | 1 | ― | インターネット接続が可能でサイトへの接続が自由であること。 |
モバイルバッテリー(電源用) | 1 | ― | 電源として設定用のパソコンへの接続も可 |
GNSS受信機(RTK対応) | 1 | 数万円 | コア社qzneo |
GNSSアンテナ (RTK・2周波対応) |
1 | 約1万円 | u-blox アンテナ |
- 金額はレシピ作成時となります。金額は税込・送料別です。
(例)GNSS受信機(コア社)GNSS受信機(ublox社)
ご購入について
ハードウェアは以下よりお問い合わせください。
株式会社コアお問い合わせ
https://www.core.co.jp/site/contact
その他必要なもの
必要なもの | 費用 | 作成方法など |
---|---|---|
docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービス アカウント | 3,000円(税抜)/月 | docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス |
IoT Connect Mobile®Type S | 1,200円(税抜)/月 | IoT Connect MobileⓇType S |
IoT Connect Gateway | 42円(税抜)/月 (7GB想定) | IoT Connect Gateway |
- アカウント作成・維持費用です。
インターネット接続環境の申し込み(ICMS モバイルルーターWi-Fi)
ICMSは、ビジネスポータルよりオンラインで簡単にお申込みいただけます。お申込みからご利用開始までの基本的な流れは以下の図の通りでございます。各項目の詳しいご対応事項はこちらをご確認よろしくお願いいたします。
1-6. docomo IoT 高精度 GNSS 位置情報サービスお申し込み
高精度な位置情報を取得する際にdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスを申し込みます。電話やホームページサイトから申込手続きを開始し、申し込み完了後、サービスを利用するためのID、PWが案内されます。
2.作業の流れ
2-1.QZNEOを利用した事前設定
高精度な位置情報を取得する際に利用するGNSS受信機及びGNSSアンテナの事前準備を行います。本レシピでは、株式会社コアのQZNEOを利用いたします。まず事前にQZNEOを手元に準備し、マニュアルをダウンロードいたします。
QZツールズのインストール
PCにQZツールズのダウンロードをお願いいたします。
https://www.core.co.jp/service/gnss/qzneo/dl/qzneo_fileserver
QZNEOマニュアルについて
製品の取扱説明書および簡易設定ツールは以下のサイトよりダウンロードしてください。
https://www.core.co.jp/service/gnss/qzneo/dl/qzneo_fileserver
QZNEOの事前設定
1) まず初めにQZNEOで高精度な位置情報を利用するための事前設定を行います。
Wi-FiでQZNEOに接続いたします。
2) 接続後、PCより、IPアドレス「192.168.100.1」を入力し接続します。
QZNEO初期設定サイトアクセス時の確認事項
- 手順1で「 192.168.100.1 」(QZNEO初期設定のためのアドレス)にアクセスしました。
- 以下図赤枠内「測位レベル」が「確定(レベル)」と表記されていると確認します。
- 以下図赤枠内のように「測位レベル」が「未確定」であるとGNSS測位ができていない状態です。
【考えられる原因と解決策】
- 屋内から測位を試みている。→屋外または屋外に近い位置に移動し、測位する。
3) 設定画面でRTK測位を移動局(NTRIPクライアント)に変更し、赤枠内へ必要事項を記入いたします。
概略位置を送信に☑を入れ、設定を反映します。
【記入する文字列と数値】
- キャスターアドレス :d-gnss.jp
- ポート番号 :2101
- ユーザー名 :別途検証用アカウントにて共有いたします。
- パスワード :別途検証用アカウントにて共有いたします。
4) NMEA送信機能のTCPサーバーに☑を入れ、設定を反映いたします。
5) 無線LAN設定を以下の手順で反映いたします。
- ステーションモードに変更する(初期値はアクセスポイントモードに設定されている)
- 利用するネットワーク(Wi-Fi、テザリングなど)のSSIDとキー(パスワード)を入力します。
(お客さまご利用のNWの記載をお願いいたします。) - DHCPからIPアドレスを取得するに☑を入れ、設定を反映いたします。
2-2.QZツールズとQZNEOの接続方法
ダウンロードの完了後の接続方法は以下のようになります。
QZNEOとQZツールズを操作するPCがUSB接続しシリアル通信を行う場合
- QZツールズを起動します。
- 図1ツールバー内の「接続方法:COM〇〇」右横の「▼」をクリックし、プルダウンから「USBシリアルデバイス~」の項目をクリックします。
- 図1ツールバー左端の「接続」をクリックし、QZNEOと接続いたします。
- 図2赤枠のように「測位レベル:確定(内容)」と表記されていれば通信ができている状態です。
【表記がない場合の原因と解決法】
図3赤枠に示すUSB接続端子の接続不良の可能性があるため、USBケーブルを接続しなおすことを推奨いたします。
【参考】移動して利用した場合の測位
QZDroidを用いて高精度GNSSとGPSを用いた際の位置測位精度の比較
実行環境
- 実行場所:東京駅前大通り
- 実行動作:GNSSアンテナを手のひらに乗せ、直進を行います。
実行結果
- 青:docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス
- 緑:比較用の通常のGPS
- 設定画面から選択可能でございます。
- QZDroidは現在配信停止されています。
本サービスは衛星の位置情報を取得しております。
東京駅周辺は丸の内ビルなどの高層ビルが複数あり、マルチパスや衛星取得数が少ないなど、測位に最適な環境ではありませんが、GPSのみの測位よりも高精度であることが分かります。
【参考】マップの選択方法
左側の赤枠を押下するとマップの選択が表示されます。デフォルトは地図ですが、今回のように、航空写真を用いると実際の位置との差がわかります。
2-3.QZNEOからICMS/ICGWへ接続する
本節ではQZNEOから取得したGNSS位置情報をクラウドサービスへ送信するために用いる通信サービスとゲートウェイの設定方法をご紹介します。
ICMSとは
ICMSはIoT Connect Mobile® Type Sの略称であり、docomoが提供するIoTデータ収集を担うIoT向けmobileデータ通信サービスです。ICMSには以下の特徴がございます。
- インターネット経由で手軽にIoTを手軽に活用できる
- 簡単にセキュアにクラウド接続ができる
- 広域帯でセキュアに閉域接続ができる
ICGWとは
IoT Connect Gateway(ICGW) を使用することで、改修を加えることが難しく、従来であればクラウドサービスに対応していなかった市販デバイスをさまざまなクラウドサービスに対応させることができます。また、モバイル回線における閉域網というセキュアな環境を活かした非暗号化通信によるデータ通信量の削減や、クラウドサービス毎の証明書や鍵をデバイス毎に管理するのではなく、デバイス共通で管理することにより証明書や鍵管理の保守運用コストを削減できるなどさまざまなメリットを享受することができます。
ICMS/ICGWに接続するためのQZNEOの設定
QZNEOからICMS/ICGWへ接続し、クラウドサービスへデータを送信する概略を図3に示します。5-3の手順4において設定したNMEAの送信機能において、図4のようにTCPクライアントに☑をいれ、ICMS通信に対応したsimカードを挿入したモバイルルーターへのデータ送信先IPアドレスとポート番号を設定します。これにより、QZNEOからICMSへデータが送信されるようになります。そして、ICGWを介し、クラウドサーバーへ位置情報が送信されます。これにより、さまざまなクラウドサービスにICMS/ICGWを介してアクセスできるようになりました。
3.最後に
3-1.次のステップ
本レシピでは、高精度な位置情報(RTK-GNSS)を知ることができる端末であるGNSS受信機の「QZNEO」とGNSSアンテナおよびdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスを用いることで、通常数m誤差が出る位置情報を数㎝単位の精度で高精度に取得できる方法および、GNSS受信機「QZNEO」で得た位置情報をIoT Connect Mobile® Type S(ICMS)へ送信する機能について解説しました。
また、高精度な位置情報の可視化に関しては、次回のレシピとなる、「IoTで高精度な位置情報取得~クラウドサービスへの接続とマッピング編~」にてご紹介します。一例として位置情報の送信機能をご紹介しましたが、さまざまな応用例がございます。本ページを参考に、ぜひともdocomo IoT高精度GNSS位置情報サービスおよび ICMS/ICGW をご活用ください。
【参考】活用事例集
docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービスのサービスページと導入事例は以下からご覧いただけます。
製品の取扱説明書および簡易設定ツールは以下のサイトよりダウンロードしてください。
https://www.core.co.jp/service/gnss/qzneo/dl/qzneo_fileserver
コア社にてQZNEOデモ用Androidアプリをご提供しております。
ICMSを活用した事例は以下からご覧いただけます。