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PLC機器の遠隔監視でメンテナンスの効率化を実現

本レシピでは、産業用機器を制御するPLC(Programmable Logic Controller)をIoTプラットフォームに接続し、取得したModbus通信データを手元のPCで遠隔監視する手順を解説します。従来、機器に不具合が発生した際は現地で原因を調査する必要がありましたが、PLCを遠隔監視することで、異常の原因を迅速に特定・対応でき、作業コストの削減が期待できます。

難易度:★☆☆☆☆

レシピ公開日:2025年3月

>PLC機器の遠隔監視でメンテナンスの効率化を実現

1.概要

産業用機器のデータ可視化は従来、工場内などのローカル環境で行われていましたが、クラウドを活用すれば複数の機器や拠点の稼働状況を一元管理できます。しかし、工場内の既存の機器をクラウドに接続するためには、新たに通信機能を持たせる開発が必要であり、高いコストが発生するという問題があります。

そこで本レシピでは、IoTプラットフォームであるThings Cloudと、その通信機能を備えた産業用ルーター(NTC-227)を活用し、既存の機械に特別な開発を行うことなくデータ送信・可視化を行う方法をご紹介します。この方法により、既存機器に大規模な開発を行うことなく産業用機器のクラウドからの遠隔監視を実現することができます。

具体的には、産業用機器を制御するPLC(Programmable Logic Controller)を産業用ルーターを用いてIoTプラットフォームに接続し、取得したデータを手元のPCで遠隔監視する手順を解説しま す。機器に不具合が発生した際は現地で原因を調査する必要がありましたが、PLCを遠隔監視することで、異常の原因を迅速に特定・対応でき、作業コストの削減が期待できます。

1-1.本レシピで実現できること

本記事では、シミュレーターを産業用機器に見立て、産業用ルーター(NTC-227)を経由して、データをIoTプラットフォーム(Things Cloud)に送信します。

構成図

活用事例

製造業では、産業用機器を長期間安定して運用するために、機器の稼働状況を常に監視し、必要に応じて点検や消耗品の交換を行うことが重要です。たとえば、マシニングセンタ(金属加工用の工作機械)では、自動車のエンジン部品からスマートフォンの筐体まで多様な製品を精密加工しますが、稼働時間や交換時期を継続的に把握しなければ、作業停止や性能低下を招きかねません。

産業用機器の制御にはPLC(Programmable Logic Controller)が利用され、センサやアクチュエータの情報が一元管理されます。また、通信プロトコルとしてはModbusが広く使用されているため、遠隔監視を実現するには、PLCに集約されたデータをIoTプラットフォームへ送信し、Modbusのデータをプラットフォームに合わせて変換・可視化する仕組みが不可欠です。

そこで本レシピでは、こうしたPLCとModbusを活用した工作機械の稼働データを遠隔で監視する例として、以下の手順を解説します。

1) シミュレーターソフトを使用して、工作機械の稼働時間や交換時期のデータを再現する。

2) 産業用ルーター(NTC-227)を介して、データをIoTプラットフォーム(Things Cloud)に送信する。

3) ModbusプロトコルのデータをIoTプラットフォームに適した形式に変換し、可視化する。

遠隔監視を導入すれば、小規模な停止や長時間の停止を予防しやすくなり、故障時の原因特定や消耗品交換のタイミング管理がスムーズになります。

1-2.所要時間

約90分

1-3.所要費⽤

デバイス購入の初期費用:65,000円

サービス利用料金:792円/月(製品IoT化パック料金)

1-4.使用するサービス

Things Cloud

Things Cloudとは

多様なセンサやデバイス接続からのデータ収集・可視化・分析、デバイスの管理などIoTに必要な機能をパッケージ化したIoTプラットフォームサービスです。IoTシステムに必要な機能の9割が組み込まれており、IoTを簡単に導入するのに適しています。また、直感的にUIをカスタマイズ可能で、用途に合った可視化画⾯を簡単に作成でき、さらにAPIファースト設計で柔軟なシステム連携も実現しており、幅広い使い方が可能なサービスとなっています。

準備物

1-5.準備するもの

ハードウェア

品名 数量 価格 備考
NTC-227 1 65,000円ほど 調達スキームによって大幅に変動する可能性があります。
購入の際は弊社までお問い合わせください
SIM(ICMS) 1 月額:792円(500MBまで)
通信超過によって費用が増加する可能性があります。
製品IoT化パック料金内に含まれます。
PC 1 WindowsPC推奨

NTC-227について

NTC-227は、4G LTE Category1をサポートする産業用IoTゲートウェイであるNTC-220シリーズのグローバル対応版です。安定かつセキュリティの高い接続を必要とする用途に理想的なデバイスです。また、IoT環境をグローバルに展開したい際にも利用することが可能になります。

その他準備するもの

必要なもの 費用 備考
Things Cloudのテナント 製品IoT化パック料金内に含まれます。
エージェント 0円 本レシピにて準備
シミュレーターソフト(ModRSsim2) 0円 本レシピにて準備

製品IoT化パックをご契約頂くことで、ICMS・Things Cloudを利用することが可能です。利用料金の詳細はこちらをご参照ください。

製品IoT化パック|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

エージェントのダウンロード

NTCに必要なエージェントをこちらからダウンロードしてください。
エージェントはModbus 通信のデータを読み取ってThings Cloudに適したデータ形式に変換する役割を持ちます。
本レシピで利用するエージェントは、公式に配布されたものを一部改変していますので、ご利用時に不具合が生じた際は保証いたしかねます。
公式のものを利用する際はこちらをご参照ください。

GitHub - Cumulocity-IoT/cumulocity-agents-netcomm: Cumulocity NetComm Agent is a dedicated agent software for connecting the NetComm router to Cumulocity.

2.作業の流れ

2-1.デバイスの準備

NTC-227の組み立てとPCとの接続を行います。

1) 画像のようにNTC-227にアンテナを取り付けます。

NTC-227

2) 側⾯にカートリッジがあるので、画像の向きで挿入してください。サイズが合わない場合はSIMのアダプターをご用意して調整ください。

NTC-227

3) 画像のように緑の電源ケーブルを接続するとNTC-227が起動します。側⾯の黄色の部分にイーサネットケーブル刺し、PCとつなぎます。

NTC-227

2-2.デバイスの設定

NTC-227を利用するためにSIMの設定、利用するプラットフォームとの接続設定を行います。

2-3. Web UIへのログイン

1) NTC-227に接続するためにPCの設定を変更します。

PCの設定からIPを192.168.1.2に変更。

Web UI

2) ブラウザ(Google chromeなど)から下記のNTC-227のIPアドレスにアクセスします。

https://192.168.1.1/
初回ログイン時にパスワードを聞かれるのでデバイスのラベルにあるpasswordを入れます。

初回ログイン
デバイスのラベル

3) パスワードを新しくするか聞かれるので変更しない場合はスキップを選択します。(後から変更は可能)

パスワードを新しくするか聞かれる画面

NTC-227のweb UI画⾯に入れます。

NTC-227のweb UI画⾯

2-4. SIM設定

NTC-227の通信を確立するため、SIMの設定を行います。

1) Networking>Wireless WAN>Data connectionから
Profile2を右の鉛筆ボタンを押して編集をします。

NTC-227のweb UI画⾯

2) SIMのAPNを設定します。

お使いのSIMのAPNを確認して設定してください。
ICMSをご利用の場合は以下の表を参考にしてください。

設定項目 設定内容
APN mobiledata.ntt.com
Username なし
Password なし
Authentication type CHAP
PDP type IPv4
NTC-227のweb UI画⾯

2-5. Agent設定

NTC-227をThings Cloudで利用するには取得したデータをThings Cloudのデータ形式に合わせて変更するためのAgentが必要になります。
ここではダウンロードしたAgentのインストールをします。

1) 外部のファイルをインストールできるようにします
System>System configuration>Firmware signature

Firmware signatureの指定をOFFにしてSaveする。

Agent設定

2) エージェントをインストールします。
System>System configuration>Upload

ダウンロードしたAgentのファイルをアップロードしてインストールを押下します。

Agent設定

3) インストール後、NTC-227が再起動します。

4) インストールしたエージェントを確認します。
System>System configuration>Package manager

ここにインストールしたエージェントのファイル名が存在すること確認します。
正常にインストールされていることを確認します。
ここで、存在しなければインストールを再度してください。

Agent設定

5) System>Rebootから再度NTC-227を再起動します。

6) System>Custom menu>Internet Of ThingsのメニューからAgentをONにします。

Agent設定

2-6. Things Cloud接続設定

1) NTC-227をThings Cloudに接続するための設定を説明します。
System>Custom menu>Internet Of Things

各項目の設定を以下の表のようにしてください。

設定項目 設定内容 備考
Server https://example.je1.thingscloud.ntt.com/s 自身のThings Cloudのアドレス
*アドレスの最後に /s を入れる。
GPIO analog measurements(s) 60 1分間隔でデータを送信します。
System resources measurements(s) 60 1分間隔でデータを送信します。
Connection signal measurements(s) 60 1分間隔でデータを送信します。
Things Cloud接続設定

2) 設定を変更したらSaveします。
※Server (接続先のThings Cloud )を変更したい場合は、「clear credentials」 を行い SAVE します。

3) System>Rebootを選択して再起動します。

これで、NTC-227側でのThings Cloudに接続するための設定は完了です。

2-7. Things Cloudの操作

Things CloudにてNTC-227を登録する操作を説明します。

2-8. デバイス登録

1) Things Cloudにてデバイス登録を行います。
デバイス管理>デバイス>登録

右上の「デバイスを登録」を押下します。

デバイス登録
デバイス登録

2) デバイスIDにNTC-227のデバイスIDを入れます。NTC-227のWeb UIから確認できます。

デバイス登録

3) 接続待機中になり、NTC-227がネットワークにつながると「承認」が表示されるので押下します。

デバイス登録
デバイス登録

2-9. プロトコル設定

通信プロトコルは、ネットワーク上でデータを送受信するためのルールや手順を定めたものです。これにより、異なる機器やシステム間でデータが正確かつ効率的にやり取りされます。
ここでは、NTC-227から送信されるModbusプロトコルをThings Cloudで利用可能なプロトコルに変換させます。

1) NTC-227から送信されたデータを読み取るためのプロトコルを設定します。
デバイス管理>デバイスプロトコル>デバイスプロトコルの追加>Modbus

任意の名前を入れて作成します。

プロトコル設定
プロトコル設定

2) 「保持しているレジスタ」から、保持レジスタを追加します。

プロトコル設定

3) 各設定項目を以下の画像と表を参考に値を設定してください。

本レシピでは、稼働時間(OperatingTime)の値と交換時期(Replacement)を教えてくれるアラームを受け取るプロトコルを作ります。

プロトコル設定
プロトコル設定

プロトコルの設定項目

設定項目(稼働時間) 設定値
名前 OperatingTime
表示カテゴリ Operatingtime
10
ステータス更新 チェック
計測値を送信 オン
計測タイプ OpeTime
計測値シリーズ S
設定項目(交換時期) 設定値
名前 Replacement
表示カテゴリ replacement
20
ステータス更新 チェック
アラームを発生させる オン
アラームタイプ Replacement
アラームテキスト 部品を交換してください
アラームの重大度 警告

2-10. 子デバイス登録(Slave設定)

NTC-227は産業用ルーターであるので、読み取るセンサ(子デバイス)を登録します。
今回はシミュレーター用のPCを接続します。

1) デバイスとの通信頻度を設定します。
デバイス管理>デバイス(IOT-GW)>Modbus

Modbus通信の通信レートとポーリングレートを以下の画像と表を参考に変更します。

設定項目 設定内容 備考
通信レート 60 クラウドにデータを送る周期
ポーリングレート 60 スレーブと通信する周期
子デバイス登録(Slave設定)

2) TCPからTCPデバイスを追加します。

以下の画像と表を参考に設定してください。

子デバイス登録(Slave設定)
設定項目 設定内容 備考
名前 任意の名前 任意の名前
IPアドレス 192.168.1.2 PCで設定したもの
アドレス 1 SlaveID(任意の値)
デバイスプロトコル 任意のもの 前項で作成したもの

これで、Things Cloud側でデータを受け取る準備が完了しました。

2-11. シミュレーターの操作

本レシピではPLC機器の代わりにシミュレーターソフトを用いて、PCをPLC機器と見立ててデータを送信します。

1) シミュレーターソフトのダウンロード

今回はPLC機器のシミュレーターとして使われるソフトであるModRSsim2を利用します。
下記のサイトからダウンロードしてください。

https://sourceforge.net/projects/modrssim2/

シミュレーターの操作

2) Windowsのバージョンによって起動できない問題があるので必要となるファイルをインストールします。

下記のサイトからお使いのPCのバージョンに合わせてファイルをインストールして再起動してください。

Download Microsoft Visual C++ 2010 Service Pack 1 再頒布可能パッケージ MFC のセキュリティ更新プログラム from Official Microsoft Download Center

コマンドプロンプトを起動して以下のコマンドをそれぞれ実行してファイルがインストールされているか確認してください。

DIR %WINDIR%\SysWOW64\mfc*.dll DIR %WINDIR%\System32\mfc*.dll DIR %WINDIR%\SysWOW64\msvcr*.dll DIR %WINDIR%\System32\msvcr*.dll

インストールがされていない場合は再度ファイルをインストールし直してください。

3) シミュレーターの起動

インストールしたシミュレーターソフトを起動してください。
シミュレーターソフトは起動するとランダムな値を送信するので操作は不要です。

シミュレーターの操作

2-12. 送信データの確認

シミュレーターから送信されたデータをThings Cloudから確認します。

1) デバイス管理>すべてのデバイス>NTC-227>子デバイス

作成した子デバイスを選択します。

送信データの確認

2) デバイス管理>すべてのデバイス>NTC-227>子デバイス>計測値

送信されたデータを折れ線グラフで確認することができます。

送信データの確認

3) デバイス管理>すべてのデバイス>NTC-227>子デバイス>アラーム

アラームを確認すると、設定したメッセージを確認することができます。

送信データの確認

3.おわりに

以上で本レシピは終了です。産業用ルーターを用いてPLC機器のデータを遠隔で監視できることが確認できたかと思います。本レシピではデータの可視化をThings Cloudのデバイス管理画⾯で確認するところにとどまりましたが、取得したデータを分析してアラートを発生することも可能です。より詳細に知りたい方は、IoTで実現する簡単な製品異常の送信とメール通知を参照してください。

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