あおり運転厳罰化を受けて、事業者はどう対応すべきか

2020年6月、あおり運転を直接取り締まるための「妨害運転罪」が施行されました。
しかし、施行後もあおり運転は後を絶たず、頻繁にニュースなどで取り上げられています。
加害者にも、被害者にもなりえる妨害運転罪、事業者はどのように対処すべきなのでしょうか。

あおり運転厳罰化を受けて、事業者はどう対応すべきか 2020年6月、あおり運転を直接取り締まるための「妨害運転罪」が施行されました。しかし、施行後もあおり運転は後を絶たず、頻繁にニュースなどで取り上げられています。加害者にも、被害者にもなりえる妨害運転罪、事業者はどのように対処すべきなのでしょうか。

厳罰化されてもあおり運転が減らない理由とは

あおり運転は令和2年6月30日から妨害運転罪として罰則の対象となった違反行為です。罰則は重く、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、加えて違反点数が25点のため、運転免許は即取り消しになります。さらに著しい危険を生じさせた場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金、違反点数も35点(欠格期間3年)とより厳しい罰が課せられます。

令和2年11月27日には、トラックなど自動車運送事業者の行政処分の対象となる事項にあおり運転が追加されました。これによりトラック、バス、タクシーなどの事業用自動車が酒気帯び、酒酔い、薬物陽使用、無免許、ひき逃げといった悪質違反を起こした場合と同様、あおり運転を起こしたドライバーに加えて事業者も行政処分の対象となります。さらに運行管理者資格者証の返納命令処分についても、過労運転などとともにあおり運転が対象に追加されました。

このように厳罰化されてもなお、あおり運転が減らない理由はどこにあるのでしょうか。大前提として考えられるのは、ドライブレコーダーが普及したことで立証が容易になったことです。こうした技術面の進歩に加えて、ドライバーによって妨害運転罪についての認識に差があることにも原因があります。自社のドライバーがあおり運転の加害者になっても、被害者になっても事業に大きな影響が出ることを考えた場合、まずは事業者あるいは安全運転管理者が、あおり運転に該当するパターンをしっかりと把握し、周知を徹底すべきでしょう。

「これは、あおり運転?」判断基準はここにある

あおり運転とは、必要以上に暴力的な方法で対象車両に強いプレッシャーをかける行為全般を指します。具体的には車間距離を詰める、幅寄せする、危険な追い越し、前方や後方で蛇行運転する、急に前に割り込んで減速、停車する、狭い道路で前方に立ちふさがるなどが該当します。

妨害運転罪で処罰される行為と違反は、対向車線からセンターラインを越えて他の車に急接近もしくは逆走などで走行を妨害すれば「通行区分違反」、故意に急ブレーキをかけて後方車両の追突などを誘えば「急ブレーキ禁止違反」、前走車の後方に張りつき、速く走行するようあおると「車間距離保持義務違反」、割り込み、蛇行運転などで進路を妨害すれば「進路変更禁止違反」となります。さらに、強引な幅寄せや不必要なパッシング、クラクションなどの威嚇行為も処罰の対象となります。

あおり運転の怖いところはこちらに悪気がなくても、周囲からあおり運転だと判断されたら処罰を受ける可能性があることです。たとえば法定速度を下回る速度でノロノロ運転する、交差点での右左折時の優先順位を理解せずに交差点を曲がる、ウインカーを出さずに車線変更するといった運転に対して行ったパッシングやクラクションが、あおり運転と判断されるケースも考えられるのです。たとえ処罰の対象にならない運転だとしても、クレームにつながることもあるため事業者は細心の注意が必要です。

これらのリスクの具体的な対策として有効なのは、やはりドライブレコーダーの設置です。ドライブレコーダーは車両荒らしなどの防犯対策となるだけでなく、あおり運転の被害に遭った際の記録にも役立ちます。さらにドライバー自身の運転を記録しておくことで、あおり運転加害者の濡れ衣を着せられた際の防衛策にもなります。

安全運転管理者の立場で考えるならば、ドライバーの業務負荷ストレスを抑制する労務管理を行うこともあおり運転の防止策としては有効です。なぜならば、車の運転は非常にストレスが多く、常に走行中は周囲の状況を確認する集中力が必要になります。道路の混雑状況で約束の時間に間に合うかどうか不安になるなど、心身が疲弊することも少なくありません。さらにコロナ禍により仕事や生活の先行きが見えない現状は多くの人に強いストレスを与えています。安全運転管理者にはメンタルケアへの配慮も求められるようになっているのです。

ちなみに安全運転管理者とは、5台以上の商用車(法人向け車両、営業車、社用車、送迎車、業務車両、事業用自動車など、もしくは乗車定員が11人以上の場合は1台以上の車両)を持つ事業者に選定が義務付けられている人員であり、運行日報の作成、安全運転の指導などがミッションとなります。

あおり運転など危険運転の抑止につながるサービスがある

このような状況を解決に導く、デジタルツールがあるのをご存じでしょうか。車両運行管理サービスと呼ばれるもので、各社からリリースされています。たとえば、NTT Comが提供する「Vehicle Manager®」は、事故後の対応に有効なドライブレコーダーとは異なり、事故を未然に防ぐサービスです。通信機能、GPS機能内蔵の小型車載器を車両に設置するだけで、運行日報の自動作成運転傾向分析車両稼働実績などをWebアプリケーション上で閲覧・管理でき、車両運行状況の管理や安全運転の確保が容易になります

動画で見る「Vehicle Manager®」

あおり運転につながる危険な行為も抑止できるため、交通事故削減による事故処理費用、自動車保険料などの関連コスト削減、エコドライブによる燃料費削減にもつながります。さらに運行日報の自動作成により、ドライバーが帰社後に手書きで日報を記入する手間がなくなることも大きなメリットです。すべてのドライバーの日報が安全運転管理者にデータで届くようになるため、ドライバーの業務負荷を軽減し、あおり運転につながるストレスを緩和する効果が期待できます。加えて日報の精度が向上し、管理の手間が軽減できるメリットもあります。

あおり運転の対策を強化したいのであれば、ドライブレコーダーとのセット導入もおすすめです。日々の運転状況の録画はもちろん、急ブレーキなどのイベント発生時には前後十数秒の映像が自動保存できます。あおり運転の兆候などがピンポイントに可視化でき、ドライバーへの安全運転指導の徹底など幅広い用途で活用できます。あおり運転の加害者、被害者になるリスクを最小化するために、前向きに導入を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 2021年8月12日時点の情報をもとに制作しています。

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