データセンターがCO2削減でできること

近年、CO2排出量削減に向けた取り組みが、国内外でますます活発になっています。特にデータセンターは注目されている業種の1つです。この記事では、CO2削減に関する世界と日本の動向、データセンターが注目されている背景と課題、CO2削減に向けた取り組み例について紹介します。

CO2削減(脱炭素)の取り組み|世界と日本の動向

CO2削減(脱炭素)の取り組み|世界と日本の動向

1. SDGs・パリ協定

CO2削減に向けた世界的な動きとして、まず「SDGs」と「パリ協定」が挙げられます。

SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」を指します。2015年の国連サミットで、2030年までの間に持続可能でよりよい世界を目指すという国際目標をもとに、それを達成するための具体的な17の行動指標と169のターゲットが示されました。
その中では気候変動、エネルギー問題についても言及され、環境負荷の低減を目指す行動も求められています。

同時期に合意されたパリ協定では地球温暖化について、長期目標も定められました。
この協定の中では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求すること」が世界共通の目標として掲げられています。

2. RE100

SDGsを契機として「RE100」の活動も加速しました。
RE100とは世界的に影響力のある各国の企業などが参画し、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標としている、協働イニシアチブです。
国際環境NGO(国際協力組織)である「The Climate Group(TCG)」が、イギリスのNGO「Carbon Disclosure Project(CDP)」と協力して2014年に発足させました。
2023年8月現在、日本からも80社以上が参画しています。

3. 2050年カーボンニュートラル宣言

日本では2020年に、当時の菅政権が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。
二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス全般について、排出量をゼロにするのではなく、排出量を吸収量と同量にまで抑えることで、収支的にゼロにするというチャレンジです。

カーボンニュートラル宣言により、一般企業による脱炭素に向けた取り組みがより活発化しています。

4. 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の策定

前述の「2050年カーボンニュートラル宣言」の2カ月後、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。
2050年カーボンニュートラル宣言を達成するための具体的な施策がまとめられています。
予算や税、規制改革、国際連携など広範囲におよび、特に今後が期待される14分野の産業に対して高い目標設定がされています。

5. 改正温対法の成立

2021年には改正温対法が制定されました。
正式名称は「地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案」といい、改正する前の温対法と比べ、特筆すべき点が3つあります。

①「パリ協定」と「2050年カーボンニュートラル宣言」を基本理念として位置づけ
改正温対法では、この2つが基本理念として位置づけました。つまり、これらの目標を国をあげて推進していくことが明確に提示されたということです。
脱炭素や温室効果ガスの削減について、これまで参画に消極的だった地方自治体や一般企業も、国としての方針が変わる可能性が低くなったため参画しやすくなり、また補助や支援を受けられる可能性も高まりました。

②地方自治体への脱炭素施策目標の追加
これまで脱炭素は主に大手企業に対して求められてきましたが、改正温対法では地方自治体の目標も設定しました。
それにより、国、地方自治体、企業、国民が脱炭素を自分ごととして捉え、より主体的に取り組めるようになりました。

また、地域脱炭素化促進事業を行おうとする事業者は地方自治体から認定を受けられるようになりました。認定された事業計画に基づいて行う地域脱炭素化促進施設の整備に関して、関係法令の許可手続きをワンストップで受けられる特例が定められ、脱炭素への取り組みの加速が期待されています。

③企業の脱炭素の促進
原則として企業に対して、CO2排出量は電子システムによって報告することが求められ、さらに開示請求なしで国民に公表される仕組みとなりました。
これはESG投資(投資において、環境・社会・企業統治に配慮し長期的に成長し続ける企業かどうかという観点で評価する判断基準)が促進するきっかけにもなっています。

6. 省エネ法の改正

省エネ法の正式名称は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」といい、2023年4月に改正されました。
改正の大きなポイントは3つあります。

①すべてのエネルギーの使用を合理化
これまでは化石エネルギー(石油、可燃性天然ガス、石炭など)が使用の合理化の範囲でした。しかし改正後は、非化石エネルギー(木材、廃プラスチック、水素、アンモニア、非化石熱、非化石電気など)も報告対象に追加されました。

②非化石エネルギーへの転換
政府が定める非化石エネルギーの転換の目標に対して、企業では中期計画作成と定期報告が必要となりました。
目標は政府が定めるものに加え、各企業で任意の目標を設定することも可能です。

➂電気需要の最適化
これまでは「電気需要の平準化」として、昼、夜、平準化時間帯(夏期・冬期の昼間)に分けて電力使用量を報告していました。
改正後は、月別または時間別(30分または60分単位)での報告が求められます。

7. 大企業からサプライヤーへの要求が強化

これらの流れを受け、脱炭素の目標値が高い大企業などは、自社サプライチェーンを構成する企業にも再生エネルギーの利用やCO2排出量の削減を要請することが増えています。そのため、脱炭素へ向けた取り組みを始めている企業も多くあります。

データセンターのCO2削減が注目されている背景

クラウドやIoT、AIの活用が高まるにつれデータセンター(以下DC)の規模の拡大や大型化が進んでおり、電力消費に伴いCO2排出量も増加傾向にあります。
この傾向から2030年には人類が使用する電力の1割以上がデータセンターで消費されると予想されているため、いかに手を打つかが注目されています。
現在すでに持続可能で効率的な設計とパフォーマンスを実現しているデータセンターは、グリーンデータセンターと呼ばれ業界の省エネをけん引しています。

1. グリーン成長戦略

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」14分野の中の「半導体・情報通信産業」にDCも含まれ、「2040年までにデータセンターのカーボンニュートラルを目指す」とされています。
業界では、2030年までにすべての新設DCの30%以上の省エネ化と、使用電力の一部の脱炭素化が求められています。

2. 経済産業省のベンチマーク制度

2022年4月から、経済産業省のベンチマーク制度に、DCが対象業種として追加されました。
ベンチマーク制度とは事業者の省エネ状況を業種内で共通の指標を用いて評価し、他の事業者との比較によって取り組みの推進を図るものです。
このことからも、業界の省エネが注目されていることがわかります。

データセンターがCO2削減に取り組む際の課題

世界的に注目されているDCの省エネの取り組みですが、課題もあります。

課題1:DC事業が多様化している

DC事業は「ハウジングサービス」と「ホスティング・クラウドサービス」の2つがあります。
このうちベンチマーク制度の対象となるのはハウジングサービスと、ホスティング・クラウドサービスのオーナーのみで、ホスティング・クラウドサービスのテナントは対象外になっています。
※オーナー:DC in DCなどでオーナーとテナントが入れ子状態の場合も含みます。

課題2:DC内での電力把握が難しい

課題1の状況により、エネルギーの利用者が判別しにくいことが課題の1つです。
オーナーによる電力消費なのかテナント側なのか、DC事業者だけでDC内の電力把握と省エネを管理するのが難しい状況にあります。

データセンターがCO2削減でできること

DC事業者が電力把握と省エネを自社のみで管理するのが難しい状況ではありつつ、省エネを推進することはできます。
ここではDCができる具体的な取り組みの例を5ステップで紹介します。

1. DCでのCO2排出量を把握する

まずは自社のサプライチェーン排出量を把握するところから始めます。
サプライチェーン排出量とは、自社での燃料の燃焼(Scope1)、自社での電気使用(Scope2)、事業活動に関わるすべて(原料調達、製造、物流、販売、廃棄など一連の流れすべて=Scope3)のCO2排出量を合計したものです。
2023年4月の省エネ法改正で、DCへの持ち込み機器によるエネルギー使用量は自社利用分とみなされるようになりました。
どこのCO2排出から削減していけばいいか判断し、それぞれに適切な施策を立てる必要があります。

2. DCに再生エネルギーを導入する

次に、太陽光発電、風力発電、バイオマスなど、そもそもCO2の排出がない再生エネルギー(以下再エネ)を導入します。
需要が高まっていることによるDCの拡大もある中で、使用するエネルギーを減らすのはあまり現実的ではありません。省エネに取り組むよりも先に、再エネを導入しましょう。
たとえば太陽光発電所を設置し自社で発電・使用することで、CO2削減とともに電気料金の削減もできるというメリットがあります。

3. 再エネ由来の電力へ切り替える

自社で再エネ導入が難しい場合は、供給されている電力を再生エネルギーで作り出した電気に切り替える方法もあります。
現在の電力会社のプランを再エネ電気のプランに変更したり、電力会社を再エネ電気を扱っている電力会社に切り替えたりするだけです。
導入費用がかからないというメリットがある一方、再エネ電気を扱う会社は大手以外の電力会社もあり、サービス打ち切りのリスクもあることに注意が必要です。

4. 省エネに取り組む

再エネの導入・切り替えまで完了してから、省エネに取り組みます。
DCの電力消費はサーバー類の冷却が大部分を占めているため、見直す必要があります。

サーバー類の冷却は、熱せられた空気を排出し冷たい空気を取り込む「空冷」が一般的です。
この「空冷」を効率的に行う取り組みとしては、部屋全体を冷やすのでなく、冷えた空気を直接サーバーにあて、熱せられた空気をそのまま外に放出するといった、エネルギー消費を抑えるように空気の流れを制御する手法があります。
また、データセンターを寒冷地(日本では北海道や、世界的には北極圏に近い地域など)に置く企業も増えています。

さらに、空冷ではなく空気を通さない特殊な液体で冷却する「液浸冷却」にすることで、直接サーバーを冷やすことができ、より冷却の効率が向上します。また、空冷は空気の分の広い空間が必要になりますが、液浸冷却ではそれよりも少ない体積の液体量で済むため、設置空間も少なく済みます。

5. カーボン・オフセットに取り組む

再エネ導入や省エネの取り組みをしても目標値に達しない場合もあります。その際はカーボン・オフセットを検討しましょう。
カーボン・オフセットとは、他社のCO2削減量を購入したり、CO2削減につながる取り組みに投資したりすることで、削減できない分を相殺し自社のCO2削減をしたとみなされる手法です。
本来の目的はCO2削減であるため、実際に削減したわけではないこの方法は、再エネ導入や省エネの取り組みを十分に行った上での最終手段です。環境省からはカーボン・オフセットガイドラインが発行されており、透明性を持って取り組むことが求められています。

CO2削減を支援する「SDPFクラウド/サーバー」の機能紹介

ここまでで紹介をしたCO2削減の取り組みを実践するにあたって、「SDPFクラウド/サーバー」は、カーボンニュートラルを推進する2つの機能を無料提供しています。
以下ではこの2つの機能を紹介します。

機能1:CO2排出量の予測

オンプレミスからクラウド移行の集約効果と、再生エネルギーによって稼働するクラウド導入により、サプライチェーン全体のCO2排出量削減ができます。
「カーボンフットプリントシミュレーター」により、DCの課題として先述した把握と管理がしづらいサプライチェーン全体のCO2排出量が予測でき、クラウド移行や再生エネルギー利用によるCO2排出量削減効果も簡単に算出できます。

機能2:CO2排出量を可視化

サプライチェーンのCO2排出量をCSR報告書で開示することは、株主や投資家などのステークホルダーに対して社会的信頼性の向上につながります。
「カーボンフットプリントダッシュボード」により国際的な評価基準に準拠したCO2排出量の確認ができ、そのまま開示値の参考情報としても活用できます。

まとめ

CO2排出量の削減に向け、持続可能でよりよい世界を目指すための長期目標や、具体的な行動指標の設定が世界規模で行われています。
企業においては、IoTなどの需要が高まりデータセンターの数や規模が拡大していく中で、データセンターのCo2削減の動向が注目されています。データセンターができる取り組みの最初のステップは、Co2排出量の把握です。SDPFクラウド/サーバーのシミュレーション機能を利用すれば、必要情報を入力するだけでCo2排出量を予測でき、サプライチェーン全体のCO2排出量削減効果を簡単に算出できます。さらに、排出量や経月推移などをダッシュボードで確認できます。企業はこれらをステークホルダーへ開示することで、社会的信頼性を向上させられます。SDPFクラウド/サーバーはこういったCo2排出量の予測・可視化機能を無料で提供しています。

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