フレキシブル・ハイブリッドワークを支えるICT環境

近年、フレキシブル・ハイブリッドワークなる働き方に注目が集まりつつあります。注目を集める理由は、企業と労働者、双方が多大なメリットを得られるためです。本記事では、フレキシブル・ハイブリッドワークの概要やメリット、実現するためのICT環境などについて解説します。

リモートワークの普及後に変化したワークスタイル

リモートワークの普及後に変化したワークスタイル

一般社団法人「日本情報システム・ユーザー協会」が公開した資料「企業IT動向調査報告書2023」の「年度別 IT部門におけるテレワーク実施率」を見てみましょう。2021年におけるリモートワーク実施率は、「7割以上」と、「4~6割」の合計が42.9%でしたが、2022年には30.6%へと減少しています。

年度別 IT部門におけるテレワーク(在宅勤務)実施率

ただ、2022年度におけるリモートワークの「今後の予定」は、「7割以上」と、「4~6割」の合計が31.6%と、現状とほぼ変わりありません。つまり、リモートワークからオフィス勤務のスタイルへ戻りつつあるものの、このままリモートワークも継続しようと考えている企業が多くを占めていることがデータから分かります。

参照元:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書2023」
https://juas.or.jp/cms/media/2023/07/JUAS_IT2023.pdf#page=200

フレキシブル・ハイブリッドワークとは

時間や場所にとらわれない働き方

フレキシブル・ハイブリッドワークとは、個々の従業員が時間や場所の制限を受けることなく、高い自由度のもと働けるワークスタイルです。それぞれの従業員が自分にマッチした働き方を選択できるため、従業員満足度の向上や離職率の低下、生産性の上昇といった効果も期待できます。

フレキシブル・ハイブリッドワークの導入は、企業にも大きなメリットがあります。1つは、採用力の強化です。時間や場所にとらわれない、自由な働き方が可能な職場に魅力を感じる方は少なくありません。

そのため、従来よりも求人広告への応募が増加する可能性があります。また、家族の介護や居住地が遠方など、さまざまな理由でオフィス勤務が難しい方からの応募も増えると考えられます。

オフィスの在り方の変化

リモートワークの普及に伴い、「オフィス不要論」も耳にする機会が増えました。しかし、オフィスにしかできないことも多々あります。たとえば、若い従業員の育成です。リモートでは従業員の細かいところまで見えず、フォローも疎かになりがちです。リアルで顔を突き合わせられるオフィスであれば、適切な指導ができ効果的な育成を行えます。

また、リモートワーク環境下では、コミュニケーションが不足しがちです。この問題を解決できる場所がオフィスです。このように、リモートワークが普及した現代でも、オフィスが不要になるわけではありません。

ただ、必ずしも毎日オフィスで顔をあわせる必要はないと考えられます。月に一度だけ、対面でミーティングや指導などを行うときにオフィスを利用するなど、役割が変化しつつあります。

フレキシブル・ハイブリッドワーク導入のメリット

ワークライフバランスの向上

ワークライフバランスとは、仕事と私生活の均衡がとれている状態です。仕事に比重が偏りすぎるとストレスの増加や疲労の蓄積などのリスクが高まり、私生活を充実させすぎると仕事が疎かになり収入が低下するおそれがあります。

在宅勤務が可能な企業であれば、従業員は毎日の通勤が不要となり、両親の介護や子どもの育児などをしやすい環境が整います。時間や場所の制限が少なくなれば、私生活を充実させつつ仕事も適切にこなせるようになり、ワークライフバランスの向上が可能です。

従業員は、自由度が高く快適に働ける環境を手に入れられるため、離職率の低下にもつながります。また、オフィス勤務が難しい層も採用の対象になるため、従来以上に労働力を確保しやすくなるのもメリットです。

いつでもどこでも仕事ができる環境の整備

フレキシブル・ハイブリッドワークを導入すれば、従業員はいつでもどこでも業務に取り組めます。遠方の出張先など、時間や場所に制限されない働き方を実現でき、業務の効率化が可能です。

なお、このような働き方を実現するには、相応の環境を整備しなくてはなりません。具体的に挙げると、マルチデバイス環境や業務システム、ネットワーク環境、適切なセキュリティ環境などの整備が必要です。

フレキシブル・ハイブリッドワークで必要なICT環境

フレキシブル・ハイブリッドワークで必要なICT環境

マルチデバイス環境

フレキシブル・ハイブリッドワークを実現するには、マルチデバイス環境が必須です。業務に要するITツールへPCでしかアクセスできない、といった状況では、時間や場所にとらわれない働き方はできません。オフィスのPCや従業員のプライベート端末(スマホ)、タブレット端末など、マルチデバイスでツールやシステムを利用できる環境が求められます。

マルチデバイス環境を整備し、データを同期することも大切です。特定の端末でしかデータへアクセスできないとなれば、業務効率が著しく低下するおそれがあります。PCやスマホなど、マルチデバイスでデータを共有できる環境が整えば、時間や場所にとらわれない働き方が可能です。

業務システム

自由度の高い働き方を実現するには、業務システムの導入も必須です。物理的に離れている従業員同士がコミュニケーションをとるためのチャットツールをはじめ、チームでのミーティングに必要なWeb会議システムのほか、開発システムや分析ツール、勤怠管理システム、顧客管理システム、生産管理システムなどが必要です。

また、これらの業務システムをクラウド化し、さまざまなデバイスからアクセス可能な環境を整えることで、フレキシブル・ハイブリッドワーク環境の整備が進みます。

ネットワーク

オフィス以外の場所で働くには、安定したネットワーク環境が求められます。ネットワークが安定していないと、Web会議中に音声や映像が遅延する、オンラインを介したデータのやり取りをスムーズに行えない、といった弊害が生じるおそれがあります。

ネットワーク構築時には、帯域逼迫に注意が必要です。複数の従業員が同じネットワーク帯域を利用することで、パフォーマンスの低下を招くケースがあります。業務に支障をきたしかねないため、リモートワークに従事する従業員の数を考慮したうえでネットワーク構築を進めなくてはなりません。

セキュリティ

自宅や出張先など、オフィス以外の場所で働く際には、セキュリティリスクへの配慮が必要です。オフィス勤務とは異なるセキュリティリスクが発生するためです。

たとえば、PCやタブレット端末の覗き見が挙げられます。カフェや図書館など、不特定多数の人が周りにいる場面では、端末の画面を覗き見られてしまうかもしれません。また、通信が暗号化されていない公衆Wi-Fiを利用したことでサイバー攻撃の対象になる、マルウェアに感染するといったリスクも考えられます。

代表的なセキュリティ対策の1つは、ウイルス対策ソフトの導入です。ウイルス対策ソフトは、不正アクセスやマルウェアを検知可能であり、情報漏えいリスクも軽減できます。

MDMの導入もおすすめです。Mobile Device Managementの略であり、スマホやタブレット端末など、従業員が使用しているさまざまなデバイスを一元管理可能なツールです。従業員が端末を紛失したり、盗難に遭ったりしても、MDMを導入していれば遠隔でのロックやデータの消去ができ、情報の漏えいを阻止します。

外出先から安全にアクセスするためのサービス

外出先から安全にアクセスするためのサービス

外出先からの安全なアクセスを実現するサービスとして、Flexible Remote Access(FRA)が挙げられます。これは、多様な場所から安全なアクセスを実現する、リモートワーク&セキュリティ基盤です。デフォルトで端末認証や証明書認証といった多要素認証を実装しているほか、優れたUTM機能でサイバー攻撃の脅威から守ります。

Flexible Remote Access
https://www.ntt.com/business/sdpf/service/fra.html

また、同サービスにはログ機能も実装されており、誰がいつ、どこへアクセスしたのかを記録として残せるのもメリットです。これにより、内部不正を抑制でき、情報漏えいリスクも軽減できます。さらに、外部認証基盤との連携が可能な点も見逃せません。

もう1つ推奨できるサービスが、Flexible InterConnect(FIC)です。こちらは、閉域網を用いてさまざまなクラウドサービスやデータセンターへ安全に接続可能な、次世代インターコネクトサービスです。

Flexible InterConnect
https://www.ntt.com/business/sdpf/service/fic.html

2つの優れたサービスを組みあわせることによって、セキュアなフレキシブル・ハイブリッドワーク環境を構築できます。外出先からも、FICを通じた閉域網を用いて社内システムへ安全にアクセスできます。

FRAとFICを組み合わせることによるメリット

閉域網にセキュアにリモート接続

閉域網は、限られた関係者のみが利用可能な通信ネットワークです。セキュリティを確保したネットワークゆえに、企業が保有するさまざまな機密情報の漏えいを未然に回避できる点がメリットです。

FRAとFICを組み合わせれば、企業の閉域網へ安全性を確保したうえでリモート接続できます。しかも、接続に複雑な設定は必要ありません。FICポータルの設定のみで、スムーズに閉域網内の業務システムやクラウドサービスへ容易にアクセス可能です。

また、FICのポータル画面では、各種クラウドサービスの設定も簡単に行えます。新たなクラウドサービスの追加や削除なども容易に行えるため、管理負担の軽減につながります。

トラフィック分離で遅延を防止

FRAとFICを組み合わせて活用するメリットとして、スムーズでストレスフリーな通信の実現が挙げられます。FRAはスプリットトンネル機能を有しており、トラフィック容量の大きなシステム、ツール利用時にはダイレクトにインターネットで通信可能であるためです。

Web会議システムや動画系アプリなどは、必然的にトラフィック容量が増加します。トラフィック容量の大きすぎる通信は、トンネルのなかで渋滞が発生しているような状況を作り出します。その結果、通信速度が遅くなり、チームでのWeb会議中に画面がフリーズする、顧客とのオンライン商談中にシステムがダウンする、といったことも起こりかねません。

FRAとFICの併用により、リモートアクセス環境下でも快適なネットワーク通信を実現できます。トラフィック容量が大きな通信でも問題が発生せず、顧客や取引先に迷惑をかける心配もありません。

FRA+FICを組み合わせることによりリモートワークで活かせる機能

FRA+FICの組み合わせで利用できる機能として、多要素認証が挙げられます。複数の認証方法を実装しているため、あらゆるものを信頼しないゼロトラストベースのセキュリティ環境構築が可能です。

ほかにも、URLフィルタやファイアウォールなどで、サイバー攻撃の脅威から防御するUTM機能をはじめ、ログの管理機能や接続先管理、外部認証基盤との連係機能なども実装しています。

このように、FRA+FICによって、リモートワークをより快適に、なおかつ安全に実施できる環境の構築が可能です。自社の情報セキュリティ環境を全体的に高めたい、リモートワーク環境下でのセキュアな環境を構築したいといったニーズにも応えられるサービスです。

これらのサービス詳細については、以下URLで確認ください。

Flexible Remote Access
https://www.ntt.com/business/sdpf/service/fra.html

Flexible InterConnect
https://www.ntt.com/business/sdpf/service/fic.html

フレキシブル・ハイブリッドワークのモデル

オープン型リモートアクセスモデル(FRAモデル)

こちらは、オフィス以外のインターネット環境から、各種クラウドサービスなどへアクセス可能なオープン型リモートアクセスモデルです。FRAの利用により、クラウドサービスやデータセンターなど、オフィスと同等の環境にアクセスできます。

FRAを利用すれば、それぞれの拠点からダイレクトにクラウドサービスやシステムへアクセスが可能です。社内リソースの逼迫を回避でき、快適な通信環境を実現します。

また、同サービスではモバイル回線から端末まで、トータルでの提供が可能です。デバイスのキッティングもサービスに含まれているため、従来発生していた管理の手間から解放されるのが利点です。

閉域型リモートアクセスモデル(アクセスプレミアムモデル)

こちらは、オフィス以外の場所から、インターネットを介することなくSaaSやPaaS、データセンターなどへのアクセスが可能な閉域型リモートアクセスモデルです。サービスの特長として、あらゆるOSやデバイスで利用可能な点が挙げられます。これは、サービスの利用にクライアントソフトが不要であるためです。

Arcstar Universal Oneと連携すれば、安全な閉域網を利用して社内同等の環境へ自宅や出張先などからアクセスできます。

閉域型リモートアクセスモデル(アクセスプレミアムモデル)を実現する各サービスの詳細については以下オフィシャルサイトをご確認ください。

アクセスプレミアム
https://www.ntt.com/business/services/premium_lte.html

Arcstar Universal One
https://www.ntt.com/business/services/network/vpn/vpn.html

Flexible InterConnect
https://www.ntt.com/business/sdpf/service/fic.html

フレキシブル・ハイブリッドワークは、今後も導入を進める企業が増加すると考えられます。自社へ導入する際には、メリットや必要なICT環境を把握したうえで進めましょう。

まとめ

フレキシブル・ハイブリッドワーク環境を整えて働き方を改善
時間や場所の制限を受けず、自由度の高い働き方と、オフィスで顔を合わせて指導を行ったり対面でコミュニケーションを取ったりする従来の働き方の両立を実現できるのが、フレキシブル・ハイブリッドワークの魅力です。企業側も、離職率低下や採用力の強化などさまざまなメリットを得られます。導入にあたっては、マルチデバイス環境や業務システム、適切なネットワーク環境などが必要であることを覚えておきましょう。

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