カーボンニュートラルとは?企業の取り組み方法や事例を紹介

地球温暖化対策の一環として、世界の各国ではカーボンニュートラルを目指し、さまざまな取り組みを行っています。この記事では、カーボンニュートラルの基礎知識から、企業が取り組む際の流れまでわかりやすく解説します。施策例や他社の取り組み事例、押さえておくべき国の動きも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

カーボンニュートラルとはどういう意味?

「カーボンニュートラル」とは、排出される温室効果ガス量と、除去量と吸収量とを相殺させることです。「カーボン」は「炭素」、「ニュートラル」は「中立」を意味します。温室効果ガスの代表は二酸化炭素(CO2)ですが、これだけに限りません。気象庁のオフィシャルサイトによれば、メタン、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスなども含まれています。

人間の活動において、温室効果ガスを一切排出しないことは現実的に不可能です。そのため、植林などの方法を用いて、排出した分と同量を吸収や除去することで、合計量を実質的なゼロに近づけようとする取り組みが、カーボンニュートラルの根幹です。

2020年10月、菅元総理大臣が臨時国会の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル宣言」を行ったことは、国内外で大きなニュースとなりました。経済産業省が作成した資料によれば、日本は2018年、温室効果ガスを約12.4億トン排出していました。内訳を見ると、エネルギー起源のCO2が85%を占めています。我が国は、それらすべての排出ガスを、2050年までに除去や吸収などで相殺する仕組みを作るよう目指しています。

カーボン・オフセットとカーボンニュートラルの違い

カーボンニュートラルは排出量を実質ゼロにしようという考え方です。一方、「カーボン・オフセット」は排出削減や吸収量の増加につながる取り組みに投資するなどして、埋め合わせ(オフセット)しようという考え方です。

カーボン・オフセットは、まず自社が排出している温室効果ガスの量を「認識する」ところから始め、排出ガスをできるだけ「削減する」よう取り組みます。ただ、それでも排出されてしまう温室効果ガスは残るでしょう。それらを削減する取り組みに投資をしたり経済的な活動を行ったりして、違った角度から「埋め合わせる」のが特徴です。具体的には、再生エネルギーを活用して温室効果ガスそのものの排出を抑制したり、植林などの方法で吸収を促進したりする方法があります。

2008年からは、取り組みによって削減・吸収されたCO2の量を数値化し、認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が始まり、現在は「J-クレジット制度」として発展しています。クレジットは、電子システム上の「口座」において、1t-CO2を1単位として管理され、売買により口座間を移転します。クレジット制度により、カーボン・オフセットで使われる温室効果ガスの排出量・吸収量の信頼性が担保されているといってもよいでしょう。

なぜカーボンニュートラルが必要なのか?

18世紀半ばから急速に進んだ産業革命の影響で、世界で消費される化石燃料が大幅に増えました。その結果、温室効果ガスが増加し、地球全体の平均気温は上昇し続けています。気象庁が公表した「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891-2021年)」を見ると、世界中で気温が平均して約1℃上昇したことがわかります。

気温が上昇傾向にあると、海面が上昇するなどし、さまざまな自然災害が発生する可能性があります。近年、日本においては、しとしとと降る梅雨のイメージが変わり、ゲリラ豪雨と呼ばれるような激しい雨がよく降るようになっていることも温暖化の影響を受けていると考えられています。

日本に限らず、世界中の気温上昇がこのまま進めば、自然生態系が破壊されて人々の経済活動が損なわれたり、生活基盤が揺るがされたりすることも十分想定できます。平均1℃程度の上昇であっても、すでにこうした危機は顕在化しています。将来にわたり持続可能な社会をつくるには、自然環境を保護し、気候変動の危機を乗り越えることが必要不可欠です。

企業がカーボンニュートラルに取り組む流れ

企業がカーボンニュートラルに取り組む際、指針として参考にできるのが、環境省が公表した「カーボン・オフセットガイドライン Ver.2.0)」です。ここでは、本ガイドラインに沿って、企業が取り組む際の枠組みとポイントを解説します。

1. 準備

まずは自社がなぜ取り組むのか、目的やビジョンを明確にすることです。同一のクレジットで複数の主体がオフセットを行ったと主張する「ダブルカウント」を避けるために、オフセット主体を明確化することも必要です。

準備の段階では、取り組みにかかるコストや受け取れるパフォーマンスのバランス、必要な人材を確保できるかなどを確認して、十分に検討することが求められるでしょう。

2. 排出量の認識(知って)

オフセット(埋め合わせ)をする温室効果ガスの排出量を知るためには、自社が排出している温室効果ガスはどれほどあるのかを確認し、認識することが必要です。

まず、事業の中で、いつ、どこで、どのようなシチュエーションで温室効果ガスが排出されているのかを俯瞰して確かめます。たとえば製造業であれば、原材料の調達、生産、流通、使用、廃棄といったライフサイクルの中で排出活動が行われていると考えられるでしょう。

排出活動を把握したら、オフセットとして算定する対象範囲を決めます。このとき、なぜその範囲なのかを合理的に説明できることが大切です。算定範囲を決めたら、使用した電力量や排出したごみの量などの「活動量」に、「単位量当たりの温室効果ガス排出量」(排出係数)を掛けて算定します。

3. 排出削減の取組(減らして)

カーボン・オフセットの対象範囲で、実際に温室効果ガスの削減へ向けて取り組んでいきます。具体的には、オフィスでのコピー用紙をリサイクル品に変えたり、リサイクルに回したりする取り組み、オフィス内の空調設定の見直しなどがあります。

自社が排出ガスを削減するほかに、排出削減活動が可能な人に対し、取り組みを促すことも重要です。たとえば、消費者に対し、製品を使用する際のエネルギーを効率的に使う方法を周知したり、イベントの参加者に自家用車ではなく公共機関を使うようお願いしたりするのもよい事例でしょう。カーボン・オフセットの取り組みへ積極的に参加してもらえるよう、啓発活動を行うこともあります。

4. 埋め合わせ(オフセット)

排出削減の取り組みをした後に、削減しきれず残った温室効果ガスを、温室効果ガス削減や吸収の取り組みに資金を出すことで、埋め合わせます。

そのために、まず算定した排出量に応じて、オフセット量を決め、クレジットを無効化することが必要です。無効化は、一度カーボン・オフセットに使われたクレジットを再び使われないようにする手続きのことです。具体的には、「無効化/取消口座」にクレジットを移転することで行います。

5. 情報提供

カーボン・オフセットの取り組みの信頼性や透明性を高めるためには、より多くの情報を消費者に提供することが重要です。たとえば、地球温暖化の現状を伝え、早急に対策を打たなければならないことや、カーボン・オフセット自体の概要や仕組みについても説明していく必要があります。Webサイトや事前広告などで消費者の目に触れやすくなるよう工夫することが大切です。

情報提供の方法については、環境省の「環境表示ガイドライン(平成25年3月版)」も参考にするとよいでしょう。

カーボンニュートラルの施策例

前述のように、温室効果ガスの大半を占めているのは、エネルギー起源の二酸化炭素です。石油や石炭を燃やしたときに発生するエネルギー起源の二酸化炭素を減らせれば、的確かつスピーディにカーボンニュートラルを成功させられるでしょう。二酸化炭素を減らす具体的な取り組みについて、解説します。

省エネルギーの推進

エネルギーは人々の生活にとって不可欠です。しかし、使い方について少し慎重になれば、温暖化の原因になる温室効果ガスを減らせるようになります。たとえば、こまめに電気を消すなど節電に取り組んだり、照明を電気効率のよいLED電球に変えたりするのは身近な例です。エネルギーの余分な消費を抑えるインバーターも流通調整のために設置できるため、省エネルギーに貢献します。

再生可能エネルギーへの切り替え

石油や石炭といった資源には限りがあるうえに、我が国はそのほとんどを海外に依存しています。人々が今後も豊かな生活を送り、かつ環境への負荷を軽減するには、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスといった、いわゆる「再生可能エネルギー」へ切り替えが急務です。再生可能エネルギーは使っても温室効果ガスは発生せず、国内で生産できるため、あらゆる企業から注目を浴びています。

カーボン・オフセットやネガティブエミッションの実施

これまで紹介したカーボン・オフセット以外に、「ネガティブエミッション(CDR)」と呼ばれる方法も有効です。これは大気中から二酸化炭素を除去する技術のことです。脱炭素化が困難な部門について、「BECCS」や「DACCS」を活用できます。

「BECCS」とは、Bio-Energy with Carbon Capture and Storageの略で、バイオマス燃料を使用した際に発生した二酸化炭素を回収し、地中に貯留する技術です。

「DACCS」とは、「Direct Air Capture(直接空気回収)」と「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)」とを組み合わせた言葉です。大気中の二酸化炭素を直接回収して貯留し、排出量をマイナスにする仕組みのことを指します。現在、こうした技術を実用化すべく、世界中で開発が行われています。

国際イニシアチブへの加盟

国際イニシアチブとは、企業が気候変動対策に取り組んだ結果を評価できる、国際的な基準のことです。2015年のパリ協定以降、環境保護対策としてさまざまな戦略が誕生しました。中でも有名なのは「SBT(Science Based Targets)」や「RE100(Renewable Energy100%)」です。こうした国際イニシアチブに加盟するのも一案でしょう。温室効果ガスをどれほど削減できるのか、再生可能エネルギーをどれだけ活用するのかなど、目標を設定、開示、実行すると、承認・認定を受けられます。

詳しくは以下のWebサイトも参考にしてください。

カーボンニュートラルの具体的な取り組み事例

カーボンニュートラルに積極的に取り組んでいる企業の具体例について、国内と国外に分けて紹介します。

日本企業の事例

大手流通グループ会社では、もともと店舗への太陽光発電パネルの設置や電気使用量削減、プラスチック対策などに取り組む環境宣言を定めていました。店舗運営にともない排出される二酸化炭素を2013年度比で2030年までに50%、2050年までに実質ゼロにすることを目標としています。

また、環境問題のさらなるグローバル化に鑑み、宣言の範囲を拡大する形で、SBT認定に向けて取り組んでいます。実際に取り組むのは各グループ会社のため、SBT認定についても、経営層への理解を促すため、丁寧に説明するなどのプロセスを重視しました。最終的には、グループ全体で連携を強化し、既存の環境宣言で掲げた以上の取り組みを推進する方向で進められています。

海外企業の事例

アウトドアブランドを展開するある企業は、サプライチェーンを含む事業全体で、カーボンニュートラルを2025年までに実現することを目標に掲げています。

具体的な戦略としては、まず直営店やオフィス、配送センターなど、所有・運営している場所で電力の100%を再生可能エネルギーへ転換することが挙げられます。しかし、実際に排出量を減らすためには、排出量のほとんどを占めるサプライチェーンや素材の製造を見直すことが必要です。そこで、リサイクルで再生可能な素材への切り替えや、提携しているサプライヤーが業務で使うエネルギー量の削減にも取り組んでいます。

カーボンニュートラルをめぐる国内の動き

近年、あらゆる企業でカーボンニュートラルに対する動きが高まっている中、あらかじめ把握しておいたほうがよい代表的な国内の動きについて、3つ紹介します。

そのほかに押さえておきたい国の取り組みは、以下のWebサイトでご確認ください。

「改正地球温暖化対策推進法」の成立

2021年5月、改正地球温暖化対策推進法が成立しました。主な改正点は3つあります。

1つめは2050年までにカーボンニュートラルを実現する旨、法律に明記したことです。脱炭素に向けて各企業や国民、自治体がより強力に取り組むよう促すのが目的です。

2つめは、地域の脱炭素化を推進するために地方公共団体に実施目標の設定を求めたことです。

3つめは、企業の排出量情報について電子システムによる報告が原則化され、開示請求の手続きなしで公表される仕組みになったことです。これにより、スピーディで透明性の高い形で脱炭素経営が進むと期待されます。

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の策定

「グリーン成長戦略」とは、2050年までにカーボンニュートラルを実現することにとどまらず、経済も絡めて成長を促進するための産業政策を指します。経済産業省が主導し、今後、成長が期待できる「洋上風力・太陽光・地熱」や「水素・燃料アンモニア」など全14の産業について、チャレンジングな目標を設定しました。カーボンニュートラルの枠組みを超え、より大きなイノベーションをおこす取り組みが示されています。

「地域脱炭素ロードマップ」の策定

「地域脱炭素ロードマップ」とは、2030年までに取り組むべき地域の脱炭素プロセスや具体策について示した、行程表のようなものです。昨今、地方にはさまざまな課題があるものの、それらを解決し、地方創生に向かわせるためには、脱炭素への戦略が重要なカギを握っています。このロードマップにおいて、国は地方自治体や地元企業などと連携し、2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を設定することなどを、目標として定めています。

国は、脱炭素に向けたさまざまな戦略方針や目標を示しています。各企業は、最新情報や世界の動向にも目を向けながら、自社としてできることは何かを早急に検討し、積極的に取り組んでことが大切です。

まとめ

国からの後押しもあり、今やあらゆる企業では省エネルギーやカーボン・オフセットなど、地球環境問題に配慮した取り組みを行っています。NTTコミュニケーションズも、2016年に「NTTコミュニケーションズグループ環境宣言」や「環境目標2030」を設定し、グループ全体で一丸となってカーボンニュートラルの実現を目指しています。

また同社では「SDPFクラウド/サーバー」として、二酸化炭素排出量を予測できるシミュレーション機能や、排出量を可視化できるダッシュボード機能を提供しています。カーボンニュートラル施策に取り組む際には、効果検証の一助としてぜひご検討ください。

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