ファイルサーバーとは?NASとの違いをわかりやすく説明

市場のデジタル化が加速している昨今、企業では、蓄積されたデータの戦略的活用が重要課題となっています。そこで必須といえるシステムがファイルサーバーです。本記事では、ファイルサーバーの概要やNASとの違いを解説します。さらに導入時のポイントなども紹介するので、サービス選定の参考にしてください。

ファイルサーバーとは

ファイルサーバーとは、企業がDXによる業務効率化を推進するために欠かせない、ファイルを保管・共有する機能に特化したシステムのことです。そこで重要な役割を担うのが、組織の情報共有基盤として稼働するファイルサーバーです。まずはファイルサーバーの基本的な知識や主な用途などについて解説します。

ファイルサーバーについて

ファイルサーバーは、基本的には任意のサーバーにWindows ServerやLinuxなどのOS、または専用のソフトウェアをインストールすることで、そのプラットフォーム上に構築できます。アクセス権限の設定や詳細なセキュリティ要件の定義、アクセスログの取得などが可能であり、組織全体の情報共有基盤として機能することが可能です。また、システム環境の冗長化を図る際のバックアップ基盤としても活用されます。必要に応じてストレージ容量の増設も可能であり、拡張性や柔軟性に優れる点もファイルサーバーの大きな特徴です。

ファイルサーバーの利用目的

ファイルサーバーは「ファイルの一元管理」「全社横断的な情報共有」「バックアップ環境の構築」の3つが基本的な役割です。
そのため、下記のような目的がある場合に活用できます。

  • 事業活動で収集された膨大なファイルやデータを一元的に管理したい
  • 情報共有を円滑にし、業務の効率化と労働生産性の向上につなげたい
  • データの破損や消失などのリスクを軽減し、有事の際におけるBCP対策として機能させたい

一元管理しているファイルをLANやWANなどのネットワーク上で共有できるため、データのやりとりを複数人でも簡単に行いたい場合に主に利用されます。

ファイルサーバーの2つの種類

ファイルサーバーには「オンプレスミス型」と「クラウド型」の2種類が存在します。オンプレスミス型は自社にサーバーやネットワーク機器を設置し、OSを搭載した物理的なハードウェアを介してファイルサーバーを運用・管理する形式です。サーバーやネットワーク機器の導入が必要ですが、自社の要件に適したカスタマイズが比較的容易であり、なおかつクローズドなネットワーク環境でセキュアに運用できるというメリットがあります。

クラウド型はオンライン環境のプラットフォームでファイルサーバーを運用する形式です。たとえば「Box」「Dropbox」「Microsoft OneDrive」といったSaaS型のクラウドストレージが代表的なソリューションとして挙げられます。オンプレミス型と比較してカスタマイズ性に劣りますが、自社で物理的なサーバーを設置する必要がないため、ハードウェアの導入費用とインフラ領域の管理が不要になる点がクラウド型のメリットです。

ファイルサーバーとNASの違い

ファイルサーバーと同じく組織の情報共有基盤として活用されるソリューションにNASが挙げられます。ここではファイルサーバーとNASの基本的な相違点と、それぞれがもつメリット・デメリットについて解説します。

NASとは

NASは「Network Attached Storage」の頭文字をとった略称で、「LAN接続型HDD」と呼ばれるネットワーク対応型のストレージです。一般的な外付けHDDはコンピューターにUSBを介して接続し、一対一の関係性でファイルを同期します。それに対してNASは保管しているデータを社内LANのようなネットワーク上で共有し、複数台のコンピューターとファイルを同期できる点が大きな特徴です。このような特性がLAN接続型HDDと呼ばれる所以であり、広義ではファイルサーバーのひとつに分類されます。

ファイルサーバーとNASの基本的な違い

ファイルサーバーとNASは情報共有基盤という点においては同様の機能を有していますが、ファイルサーバーはファイルを保管・共有するシステムそのものを指すのに対し、NASは物理的なストレージ機器を意味します。ファイルサーバーはOSのファイル共有機能を活用し、LANやWANなどのネットワーク上でファイルを保管・共有する仕組み全般のことで、オンプレミス環境に構築された情報共有基盤やオンライン環境で稼働するクラウドストレージなども含まれるのが特徴です。

一方、NASはローカルネットワークでファイルを共有する機能を備えた物理的な補助記憶装置を指します。つまりファイルサーバーはファイルの保管・共有に特化したコンピューターリソースで、NASはネットワーク機能を有する外付けHDDと言い換えられます。

ファイルサーバーとNASのメリットについて

ファイルサーバーとNASはそれぞれに一長一短があります。ファイルサーバーとNASが持つ主なメリットとして挙げられるのが以下の要素です。

ファイルサーバーのメリット

ファイルサーバーのメリットはファイルの保管・共有を簡単にできるだけでなく、NASよりも細やかなアクセス権限設定が可能な点にあります。ファイルサーバーには従業員の個人情報や顧客情報、人事考課情報、経理文書などの機密情報が保管されているため、堅牢なセキュリティ体制を構築しなくてはなりません。ファイルサーバーは特定のファイルに対するアクセス権限を役職や部署などに準じて設定可能なため、情報漏洩インシデントにつながるセキュリティリスクを最小限に抑えられます。

また、ハードウェアの増設によってストレージ容量を増加できるため、自社の経営体制に応じてITインフラを柔軟に拡張できる点も大きなメリットです。ハードウェアの増設はストレージ容量の増加のみならず、バックアップ環境の整備やシステムに対する負荷の分散、ネットワーク障害や災害時におけるBCP対策といった事業リスクの軽減に寄与します。さらにクラウド型のファイルサーバーであればハードウェアを増設することなくストレージ容量を簡単に増加できるため、スケーラビリティに優れるITインフラの構築が可能です。

NASのメリット

NASのメリットはファイルサーバーと比較して導入費用を抑えつつ、短期間で全社横断的な情報共有基盤を構築できる点です。NASは基本的にファイル保管・共有とアクセス権限を管理する機能が搭載された状態で販売されており、ファイルサーバーのようなコンピューターリソース環境を構築する必要がありません。組織全体の情報共有基盤としてはファイルサーバーに劣るものの、ファイルの保管とバックアップのみに用途を限定した場合、より安価に環境を構築できるNASを選択する企業も多い傾向にあります。

HDDのクラッシュという危険要因が想定されるものの、RAIDと呼ばれる冗長性の仕組みを活用することでリスクの分散が可能です。また、NASはローカルネットワークでファイルを保管・共有するという用途が一般的ですが、ウェブブラウザーや中間サーバーを経由して外部ネットワークからアクセスすることも不可能ではありません。ユーザー単位やグループ単位でストレージ容量を制限できる機能を活用し、それぞれに最適化された容量を割り当てるといった使い方も可能です。

ファイルサーバーとNASのデメリットについて

ファイルサーバーとNASはさまざまな恩恵を組織にもたらすものの、決してメリットばかりではありません。ファイルサーバーとNASの主なデメリットとして以下の要素が挙げられます。

ファイルサーバーのデメリット

ファイルサーバーのデメリットは、構築するシステム環境の規模に比例して物理的なハードウェアの導入費用と、ITインフラの保守・運用に関する管理コストが増大する点です。また、ファイルサーバーの構築と運用には専門的な知見を有するエンジニアが不可欠であり、貴重な人的資源をITインフラの保守・運用というノンコア業務に割かなくてはなりません。オンプレミス型のファイルサーバーはこうしたデメリットが想定されるため、近年では情報共有基盤のクラウドマイグレーションを推進する企業が増加傾向にあります。

NASのデメリット

NASのファイルの保管・共有に必要な機能があらかじめ搭載されているというメリットは、裏返すとその機能の範囲でしか自由が利かないというデメリットを意味します。また、アクセス権限設定やIPアドレスに準じた接続制限といったセキュリティ機能のレベルは機種によって異なるため、必ずしも自社のセキュリティ要件を満たせるとは限りません。さらにRAIDによってファイルの破損・消失リスクを抑えられるものの、その実装には相応の知識と技術が必要であり、設定を誤ればHDDの故障とデータの消失が連動してしまう危険性があります。

ファイルサーバーを導入する際に押さえておくべきポイント

ファイルサーバーを事業領域で戦略的に活用するためには、いくつかの押さえるべきポイントが存在します。なかでも導入時に押さえておくべきポイントとして挙げられるのが以下の4点です。

  • クラウド化を検討する
  • 接続ユーザー数は適切かどうか
  • データの容量を確認する
  • セキュリティ性を確認する

クラウド化を検討する

オンプレミス型のファイルサーバーは導入費用と管理コストが高額かつ、システム環境の実装に多くの時間を要します。そのため、これからファイルサーバーの活用を検討している場合はクラウド型の導入がおすすめです。ファイルサーバーの老朽化によって刷新を検討しているのであれば、クラウドマイグレーションを検討すべきといえます。また、高度なセキュリティ要件を求められる業界や自社独自のクラウド環境を構築したい場合は、パブリッククラウドではなくプライベートクラウドの導入を視野に入れるべきかもしれません。

接続ユーザー数は適切かどうか

ファイルサーバーの運用基盤となるOSによって、接続可能なユーザー数が異なるケースがある点に注意が必要です。たとえばネットワークの混雑によって同時接続に制限がかかる場合や、ファイルサーバーそのものに制限があるケースが存在します。こうした設定はファイルサーバーとして利用しているOSに依存するため、必ず事前に確認しておかなくてはなりません。自社のビジネスモデルや企業規模を考慮し、接続できるユーザー数を確認した上で最も適したプランを選定することが大切です。

データの容量を確認する

現代は情報爆発時代と呼ばれており、企業が事業活動で取り扱うファイルやデータの総量は今後もさらに増大していくと予測されます。そのため、導入するファイルサーバーのストレージ容量は無視できない重要な要素です。先述したように、ファイルサーバーはハードウェアの増設によってストレージ容量の増加が可能です。しかし、余計なコストを削減するためにも事前にファイルサーバーの容量を確認するとともに、業務で取り扱うファイルのサイズやデータの種類などを把握しておく必要があります。

セキュリティ性を確認する

ファイルサーバーを選定する上で押さえておくべき重要な要素のひとつはセキュリティ要件です。現代は情報通信技術の発達に伴ってデジタル化が加速しており、不正アクセスやマルウェアといったサイバー攻撃の脅威も高度化かつ多角化していく傾向にあります。また人為的なミスによる情報の流出といったエラーも考えられるため、アクセス権限設定やアクセスログの取得、ID・パスワード管理、ウイルス対策などのセキュリティ機能を確認しなくてはなりません。

ファイルサーバーを利用する際の注意点

ファイルサーバーを事業領域で戦略的に活用するためには、情報セキュリティ体制の強化とバックアップ環境の構築が不可欠です。情報漏洩インシデントは企業の社会的信用を失墜させ、さらに売上機会の損失や株価の下落、優良顧客の喪失、損害賠償責任の発生、業務停止などの重大な損失を招く要因となります。このようなリスクを回避するためには、情報管理とセキュリティに関するデータガバナンスを整備し、策定したルールを遵守する組織体制を構築しなくてはなりません。

また、企業が持続的に発展していくためには、ITインフラの可用性を強化する必要があります。地震や火災といった災害、あるいはサイバー攻撃によってファイルサーバーの停止を余儀なくされた場合、事業の継続そのものが困難となりかねません。とくに日本は地震大国であり、オンプレミス環境でファイルサーバーを運用するのであれば、万が一の災害に備えたバックアップ環境の構築が必要です。

クラウドストレージの導入を検討

近年、さまざまな分野でDXの推進が重要課題となっており、その実現に向けてクラウドコンピューティングの活用を推進する企業が少なくありません。総務省が2022年5月に公表した調査(※)によると、国内企業の70.4%が何らかのクラウドサービスを導入しており、なかでも最も多く利用されているのが「ファイル保管・データ共有」の領域です。クラウドサービスを利用する理由は、以下が上位となっています。

  • 場所、機器を選ばずに利用できる
  • 資産、保守体制を社内にもつ必要がない
  • 安定運用、可用性が高くなる
  • 災害時のバックアップとして利用できる

このような特性からオンプレミス型が抱える多くの課題を解決できるため、ファイルサーバーの戦略的活用を推進するのであれば、クラウドストレージの導入を検討すべきでしょう。

クラウドストレージの導入や導入後の運用管理に社内リソースが割けない場合などは、ワンストップでこれらのサービスを行うソリューションを活用するのもひとつの方法です。

NTT Communicationsの提供するプラットフォームサービス「Smart Data Platform」は、データの収集から管理分析まで、データ活用に必要な機能を組み合わせて依頼することが可能なサービスです。クラウドストレージの導入はもちろん、「重要なデータを安全に保管しながらDX化を進めたい」「自社の課題にあわせたサポートがほしい」といったニーズがある場合などは導入を検討するとよいでしょう。

(※)令和3年通信利用動向調査の結果(p.18,p.21)|総務省(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

まとめ

ファイルサーバーとは、ネットワーク環境を通してファイルを保管・共有する機能を備えたシステムです。サーバーにOSや専用のソフトウェアをインストールし、そのプラットフォーム上に情報共有基盤を構築します。オンプレミス型のファイルサーバーは自社独自の要件を満たしやすいものの、ハードウェアの導入やITインフラの保守・運用、可用性・安定性の強化、バックアップ環境の構築などに多大なコストを必要とします。このような課題を解決するとともに、先進的な情報共有基盤の構築を目指す企業は、データの収集から管理までを一元化できるプラットフォームサービス「Smart Data Platform」の導入を検討してみてもよいでしょう。

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